「一緒に渡りましょうか」 那覇商高生、通学路で障がい者支援の輪


この記事を書いた人 志良堂 仁
フェイスブックに投稿された、視覚障がいのある男性を同行サポートする那覇商業高校の女子生徒=2016年11月、那覇市牧志(仲根建作さん提供)

 高校生の小さな気付きと声掛けが温かい輪となって広がっている。公共交通機関が交わり、企業や商業施設も集中する県庁周辺。視覚障がい者や高齢者など、体が不自由な人も多い。通学路として利用する那覇商業高校の生徒らが障がい者の横断を手伝う先輩や友人らの姿に影響を受け、横断できずに立ちすくむ人を見掛けると安全に道路を渡れるよう声を掛ける支援が徐々に広がっている。

 昨年11月、那覇市の仲根建作さん(59)が、那覇市牧志で白杖を持つ男性(32)をサポートする那覇商業高校の生徒の後ろ姿の写真をフェイスブックに投稿した。同校の松本郁子教諭が「他の生徒も参考にしてほしい」と教室で話すと、既に生徒の多くがこの男性に同行のサポートをしていたことが分かった。

 男性の道路横断を手助けしたことのある同校国際経済科2年の大城江那さん(17)は、困っている人を見掛けると「一緒に渡りましょうか」、奥浜帆乃香さん(17)は「何かできることはありますか」と声を掛けているという。大城さんは「声を掛ける先輩を見て、自分もやってみようと思った」と振り返る。

那覇商業高校国際経済科2年の(前列左から)久保奈々加さん、上間杏野さん、奥浜帆乃香さん、(後列左から)具志堅聖良さん、赤嶺沙希さん、大城江那さん=2016年11月、那覇市奥武山

 奥浜さんは面識のない他人でもある障がい者にどうやって声を掛けていいか分からず、声掛けの方法をインターネットで検索して調べたことも。現在は「どういう場面が怖いのか尋ね、次に生かす」と語り、障がい者が不安にならないような声掛けを模索している。上間杏野さん(17)と久保奈々加さん(17)も、信号が青でも渡らなかった男性に声を掛けた経験がある。上間さんは「渡らないのではなく、渡れないのが分かったから声を掛けた」と話した。

 昨年11月から12月にかけて、県庁周辺の道路上で、車いす利用者や高齢者の横断を手助けする那覇商業生の姿も頻繁に確認された。

 高校生らに声を掛けられた視覚障がいのある男性(32)は「(健常者の)声掛けはとても心強い。普段はエンジン音が途切れてから渡るが、交通量が多い那覇では音が途切れず、横断が難しい」と説明。特に国道58号は、視覚障がい者が1人で渡るには大きな困難が伴うという。男性は、援助を依頼した人に「本当は見えているのでは」と疑われた経験があり、自分から声を掛けるのをためらうことも。「一言あるとありがたい」と話した。

 松本教諭は「声掛けしたいけど掛けられないもどかしさを味わいつつも、他の生徒の行動を見てまねする生徒も多い」と目を細めた。(半嶺わかな)