2本の腕を巧みに操り、人のような動きで実験試料を調整する人型ロボットが、恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)にこのほど導入された。正確さと疲れ知らずの働きで高度に繊細な研究を下支えしており、研究の精度とスピードの向上に期待がかかる。作業手順などの調整の最終段階に入り、近々実用化される見込みだ。
生物や化学の研究の中核を担うDNAやタンパク質の解析は、生物の組織や細胞から目的の成分を取り出し、高精度の分析機器にかけることから始まる。目には見えない分子を正確により分け、漏らすことなく確実に集めることが正確な実験への一歩だ。
従来は熟練した技術員らが行うが、疲労などにより精度にばらつきが出ることもある。試料によっては調整に一晩以上かかるものもあるが、人間が作業できる時間は限られる。しかしロボットなら精度は一定で24時間休まず作業ができる。
研究支援ディビジョンの島貫瑞樹さんは「正確に同じ作業を繰り返すことができ、データの再現性が高くなる。人力ではできないこと」と期待をかける。
実験器具が並ぶ専用スペースに設置されたロボットは、1センチほどの実験用チューブのふたを器用に開け、液体を注入する器具を操作して試薬を加えたり、分析機器の中にセットしてスイッチを操作したりと、七つの関節がある腕をなめらかに動かし、“体重”220キロ程度の大きさながら緻密な作業をこなす。
ただ器具の場所や手順、力加減などはコンピューター上で細かく設定する必要があり、本格運用はこれからだ。プログラムを作る機器分析セクションのビジャール・ブリオネス・アレハンドロさんは「設定は大変だが、コンピューター上に情報を残すことで、熟練した技術者のプロトコル(実験手法)を記録することにもなる」と意義を語った。