新成人の娘へ母の愛 病越え、紅型制作 南風原の城間さん


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母親の城間優子さん(左)が制作した紅型の振り袖を羽織る娘のふみ桜さん=7日、南風原町津嘉山

 【南風原】南風原町津嘉山の小学校教諭城間優子さん(47)が、8日に同町の成人式に参加する長女、ふみ桜(よ)さん(19)のために、約1年かけて紅型の振り袖を制作した。途中、肺の病気で長期入院を余儀なくされたが、病室でも周囲の支援を受けながら着物を染める作業などを続け、昨年12月末に完成させた。城間さんは「昔から沖縄の伝統工芸が好きで、娘の成人式に手作りの振り袖を着せてあげたかった。娘にもその良さを感じてもらえたら」と思いを語った。

 城間さんが紅型を始めたのは5年前。最終的に振り袖を作ることを目的に、宜野湾市で紅型研究所「染千花」を開いている知花千賀子さん、幸修さん親子の指導を受けた。だが、教員の仕事との両立が難しく、半年ほどで一度中断した。

 それから3年半ほど過ぎた昨年1月ごろ「振り袖を作る夢を諦めたくない」と再び知花さんの元を訪ねた。再開後は染めの練習から始め、いよいよ制作に取り掛かろうとした6月ごろ、健康診断で肺病の一つ「非結核性抗酸菌症」にかかっていることが判明し、長期入院することに。「もう無理かなと落ち込んだが、病気に負けて断念したくなかった」

 城間さんは主治医やスタッフの理解と協力を得て、病室で制作を開始。点滴をしたまま、染めの作業を続けた。40日の入院期間を経て、退院後も染めや縫い上げる作業を続け、12月末にようやく振り袖の形に仕上げることができた。

 城間さんは「成人式に間に合わないかと思ったが、何とかやり切ることができた。周囲の協力に感謝したい。後は当日の晴れ姿を楽しみにしたい」と感慨を込めた。ふみ桜さんは「鮮やかで、沖縄らしさが出ていてきれいだと思った。私のためにここまで頑張ってくれた母に感謝したい。目立ちそうでちょっと恥ずかしいけど、母が作った自慢できる着物なので、自信を持って着たい」と照れくさそうに笑った。(外間愛也)