病や感謝 歌につづる 沖縄型筋萎縮症・佐渡山さん


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パソコンで琉歌の作品をつくる佐渡山安光さん=北谷町上勢頭の生活サポートセンター「まぁーる」

 北谷町の生活サポートセンター「まぁーる」(NPO法人コミュニティー広場ゆいゆい運営)を利用する佐渡山安光さん(68)=沖縄市=が、施設の職員への感謝や自身の障がいへの思いをつづった琉歌や俳句などをつくり続けている。沖縄型神経原性筋萎縮症の影響で筋力が落ちており、パソコンを使って作品を生み出す。職員にそれぞれの名前を使った作品を贈り、喜ばれている。車いす生活ながら県内各地を飛び回る佐渡山さんの姿を見て、職員は活力をもらったり支援の在り方を考え直したりしている。

 職員の安慶名春枝さん(61)は「安慶縁/名集め実り/春の枝」という俳句や琉歌を贈られた。「縁起がよさそうでとてもうれしかった。自分の名前は古いような気がしていたが、作品を見てから自分の名前が好きになった」と喜ぶ。

 11月に開かれた肢体不自由児者の作品展には、中途障がい発症の思いを表した「朝起きて見れば(あさうきてぃみりば)/緑葉の花木(みどぅりばぬはなぎ)/心穏やかに(くくるしじまやい)/日々の憂い(ひびぬゆたしゃ)」という琉歌を出展した。職員の友寄哲二さん(60)は「思いもよらない表現にはっとする。どの言葉も心に響く」と語る。

 多数の秀作を生み出すことに周囲は感嘆の声を上げるが、佐渡山さんは「昔から好きなので遊びのつもりで始めた」と、淡々としている。

 佐渡山さんは「ちゅいしーじー(助け合い)」という言葉を大切にしている。発症前は沖縄市池原の自治会長を務め、地域活動に貢献した。

 1994年には沖縄市内のボランティア団体連絡会「おきぼらんシージー」を立ち上げ初代会長に就任。現在も会合に出席し、頼られている。

 歴史や風俗などについて独自の研究をしており、支援を受けながら県内各地を飛び回る。その博識ぶりは、博物館の学芸員に助言を求められるほどだ。

 宮島京子施設長は「佐渡山さんを見ていると自分も何かしないといけないと思っちゃう。活発すぎて時には制度上、支援したくてもできないこともあるが、そこで『サポートとは何か』と考える。身の回りの世話だけではなく、生きがいもサポートしたい」と語る。

 佐渡山さんの琉歌や研究の成果は大量に蓄積されており、職員らは「このまま埋もれてしまってはもったいない」と発表の場ができることを期待している。(稲福政俊)