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モデルが極める沖縄の伝統「豆腐よう」 祖母から継ぐ王朝の味


この記事を書いた人 Avatar photo 稲福 政俊

 東京を拠点にファッション誌やテレビCM、化粧品会社のカタログなどで活躍するモデルの松島よう子さん(本名・松島洋子、沖縄県那覇市首里出身)が、沖縄県内で豆腐ようを作っている。松島さんの豆腐ようは、琉球王朝時代から伝わる門外不出の製法が特徴。大粒でうまみが凝縮され、角のないまろやかな味だ。全て手作りで手間が掛かるが、東京と沖縄を行き来しながらモデルと豆腐よう生産を両立させている。

豆腐よう用の豆腐を干す松島よう子さん=沖縄県那覇市首里

 松島さんが作る豆腐ようは、沖縄県産の島豆腐、県産の紅麹(こうじ)、泡盛の古酒を使う純県産品。沖縄の太陽で天日干しした島豆腐を、陶芸家の父親が作った南蛮甕(がめ)で漬け込む。「一度東京で天日干ししたことがあるが、ぱっさぱさになってしまった。湿度など沖縄の環境が豆腐よう作りに合っていると思う」と、県内での生産にこだわる。

松島よう子さんが作った豆腐よう

 製法を代々継承してきた母方の祖母が家庭で豆腐ようを作っていたため、幼いころから味に親しんでいた。「親戚が集まる時、祖母が奥からとっておきの豆腐ようを出してくれた。楽しい時にみんなで食べていたのが豆腐よう。いい思い出しかない」と、「豆腐よう愛」は筋金入りだ。

 祖母は商品化しておらず、製法を受け継いだ叔母が「古式豆腐よう与儀」のブランドで販売を始めた。松島さんは8年前から叔母に作り方を習い、2015年11月に独立して「豆腐よう松島」を立ち上げた。

陶芸家の父親が作った豆腐ようを漬け込む南蛮甕

 3カ月に1度の頻度で帰省し、豆腐よう作りに励む。豆腐の干し方が肝心で、天気や湿度、風通しを見ながら、3、4日は付きっきりになるという。

 叔母の商品が県内で並んでいるため、販路は東京とネットに決め、東京の居酒屋に飛び込みで営業した。現在、麻布十番、新橋、銀座、神保町の4店舗に商品を卸している。生産、販売、営業、出荷を1人で行う。

 モデルの仕事が与えられた企画の枠内で自分を表現するのに対し、豆腐よう生産は時間をかけてゼロから生み出す。「モデルは使われる立場で消費される側だけど、豆腐ようは作る側で、自分が動かないと始まらない。両方をするようになり、心のバランスが良くなった」と、ギャップのある兼業に充実感を感じている。(稲福政俊)

英文へ→Model Yoko Matsushima makes traditional Okinawan tofuyo using a method passed down from Ryukyu Kingdom era