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沖縄の水球を日本一に 夢抱き、ソロモンで奮闘

青年海外協力隊での活動で夢を追う與那原祥教諭=那覇市の真和志高校

 沖縄の水球チームを日本一にしたい、という思いを胸に「何もない状態から生み出す力を途上国から感じ、その発想力を今後の選手育成に生かしたい」と考え、海外に飛び出した指導者がいる。真和志高校体育教諭の與那原祥さん(29)。専門の水球では年齢別日本代表候補の経験も持つ元競技者。国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊の体育隊員として2016年の夏からソロモン諸島に渡り、本来の授業に加え、水泳や水球などを教えている。ゼロからの挑戦の中で、20年の東京五輪水泳競技へソロモンの選手を送り出す、という新たな目標もできた。二つの大きな夢を展望した奮闘が静かに動く。(崎原有希)

■戸惑いのスタート

 ソロモンでの指導は苦難の連続だ。日本では当然のことが当たり前ではない。学校にプールはなく用具もない。授業に来ない生徒も多い。練習場所の確保や用具の調達など、基本的な環境整備からスタートした。現地の子どもたちは体育の授業を受ける環境がなく、授業に参加させることさえ容易ではない。考えたのはスポーツの魅力を伝え、生徒が進んで体育をやりたくなる環境づくり。リレーや綱引きなど初体験の競技で授業により興味を持ってもらい、士気を高めることを目的に競わせるメニューも盛り込んでいった。

 水泳や水球は公式のプールがないため海で指導する。クラゲの大量発生で練習が中止になったり、波が荒いためフォームが乱れたりと、プレー一つも思うようにいかない日々だ。

 練習に参加できる生徒も多くないが、継続する生徒らは着実に成長している。これまでは環境がなく、ソロモンからの競泳(水泳)での五輪出場はない。前向きに取り組む子どもたちを前に、「東京五輪に出場させたい」と途上国の可能性に思いをはせた。

 五輪の水泳競技は各国に出場枠があり、與那原さんはソロモンの地元組織にも働き掛けを続けている。

■教え子らへ思い

 自身は小学4年生から水球に打ち込んだ。那覇商業高時代は全国総体8強入りや国体出場、U16日本代表候補に選ばれた。日体大4年ではインカレ優勝も経験。選手として一流の実績といえる。

 だが、インカレ決勝の舞台では、ベンチ入りしたものの1秒も出場することはなかった。「このままでは終われない」。指導者の道を決断した。

 指導者を志すきっかけの一つは、大学時代の家族との死別だった。4歳下の弟・俊さんが白血病の闘病の末、高校2年生の若さで志半ばでこの世を去った。俊さんも水球の選手で、中学時代に全国準優勝を果たすなど、実力は折り紙付き。日本代表を目指していた。「自分より才能があった。どうして弟なんだ」。17年の短い生涯を目の当たりにし、「命の大切さを伝えながら、沖縄のチームを日本一にする」という思いが湧き出てきた。指導者として弟と同年代の子どもたちに思いを託す。

 あなたが生きている今日はどれだけの人が生きたくても生きられなかった未来である―。與那原さんが心に刻む、アメリカ先住民、インディアンの言葉だ。努力の先に何が見えるのか。教え子らと共に與那原さんは夢を追い続ける。

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一時帰国、講演と協力要請

 青年海外協力隊として現在ソロモンで活動している與那原祥さんは約2週間の一時帰国中の6日、那覇市の真和志高で「あなたが生きる今日」と題した講演を行い、生徒らに半年間の活動を紹介した。「笑顔で生きるために、今を精いっぱい生きる」というメッセージに、生徒らも刺激を受けた。

 與那原さんは11日に再びソロモンへと向かう。東京五輪へのソロモン選手出場の目標を含め、「沖縄の力を借りたい」と希望している活動がある。(1)ソロモンの子どもたちに水泳道具を届ける(2)6月の県高校総体にソロモン水泳チームをエキシビションで出場させる―ことだ。資金面での援助や、実現に向けた方法など、幅広い支援を呼び掛けている。問い合わせ、情報提供はyonahara358@gmail.com