沖縄県“幕引き”躍起 副知事疑惑、説明に客観性なく


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
副知事の疑惑について説明する翁長雄志知事(右)と平敷昭人教育長(左)=20日、県庁

 2015年の教員採用試験を巡る沖縄県の安慶田光男副知事の口利き疑惑が浮上してから3日目となる20日、翁長雄志知事は定例会見の場で見解を明らかにした。安慶田副知事も公式な取材の場を設け、報道陣の質問に応じた。両者が同日に説明の場を設けたことで早期の火消しを図る翁長県政の狙いが透けて見えるが「安慶田副知事に確認した」(翁長知事)、「報道にあるような事実はない」(安慶田副知事)との言葉に終始し、客観的な検証に関する説明は乏しいままに終わった。

 19日、記者団に安慶田副知事の一連の疑惑に関する見解を問われた翁長雄志知事は「明日(20日)の定例会見で話す」と話していた。同日夜、安慶田副知事も知事と気脈を合わせたように、記者団に「明日(20日)、ぶら下がりをやる」と語った。翁長県政が20日を、疑惑を巡る騒動の“収束日”に位置付けていたことがうかがえる。

■内部調査で完結

 疑惑に関する初めての報道が出る前日の17日夜、安慶田副知事は報道が出る旨を翁長知事に報告していた。それから3日たった20日午前、定例会見に臨んだ翁長知事は用意していたコメント文を読み上げた。「(安慶田)副知事に確認したところ、教育委員会への働き掛けを行った事実はないと聞いている」。同席した平敷昭人県教育長は「前教育長ら(当時の県教育庁幹部)5人に確認したところ、働き掛けの事実はないという返事だった」と調査結果を説明した。

 追加調査するか問われた翁長知事は「副知事や職員を信頼しつつ、県民の理解を得ながらやるにはどうしたらいいかを考えている」と述べるにとどめた。

 安慶田副知事も同日夕の記者団の取材に対し、知事や教育長の定例会見発言を引き合いに「報道にあるような事実はない」と重ねて関与を否定した。

 客観性を保つ観点から外部の調査を入れる考えはないか-。知事から安慶田副知事への聞き取り、県教育庁から当時の幹部への聞き取りなど、疑惑に対する調査がいずれも県内部で完結していることについて、報道陣から質問が上がった。取材に同席していた金城武総務部長は「われわれとしては(事実はないことが)確認されている」と外部調査の可能性を否定した。

■追及必至

 「副知事もないと言っているし、教育庁も調査して『なかった』と言っている」。翁長知事の定例会見後、複数の県幹部は20日の翁長知事らの説明で疑惑に関する騒動は“幕引き”だとの見方を示した。

 だが、2月中旬から2017年度の一般会計予算案などを提案する県議会2月定例会が始まる。野党の自民党は安慶田副知事の疑惑に関し、徹底追及する構えを示している。

 「果たして、知事らのこの説明で議会を乗り切れるか」。県幹部の一人は壁に掛かったカレンダーを見詰め、不安げな表情を浮かべた。(当銘寿夫、島袋良太)