『沖縄VS.安倍政権』 沖縄の軍事要塞化 警戒


社会
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『沖縄VS.安倍政権』宮里政玄著 高文研・1620円

 著者は、国際政治学者として内外で知られ、多くの論文と著書がある。体調がすぐれない中、この本の出版を思い立ったのは、軍事要塞(ようさい)化が進む沖縄の将来を案じてのことであろう。

 「自己決定権」が翁長雄志知事のもとで主張され、辺野古新基地建設をめぐって安倍政権と争っている。著者は「日本政府と国民の沖縄問題に対する無理解、無関心に対して沖縄ははっきりとその態度を決めるべき時が来ている」として当面する問題を分析した。

 沖縄に基地を押し付けている政策の背景に「日米の沖縄少数民族論」があると指摘している。米海軍作戦本部が沖縄占領にあたり作成した「民事ハンドブック」、日本の「天皇メッセージ」、最近の海兵隊の沖縄蔑視研修資料に言及している。

 沖縄に理解のある識者の中にも、基地集中の原因が「歴史的経緯」にあるという見方をするのは、冷戦時代ならともかく、沖縄の地政学上の軍事的価値が失われた現在、とても納得がいかない、と述べている。

 沖縄問題の背景をなす「中国の台頭とソフトパワー」について、国際政治学者ジョン・アイケンベリーら内外の研究者の論考を紹介し、分析している。

 著者は「アメリカは中国との間に協調関係を築き、両国の衝突を回避しながら、日本や韓国などとの同盟を堅持して、東アジアにプレゼンスを残そうとしている。この対中共存政策と、中国を潜在的な敵とみなす安倍外交の間には、根本的な矛盾がある」とみている。「いま日本にとって必要なのは、ソフトパワーを発揮することだ」と強調している。

 安倍政権が、中国脅威論を振りかざして、沖縄に自衛隊基地の新設、米軍基地との共用を狙い、「南西シフト」を進めていることに強い警戒感を示している。東アジアの紛争に巻き込まれないため、沖縄の要塞化を避けるためには、「安倍外交に対する積極的な反対を継続すべきだ。この方法しかない」と主張している。
(高嶺朝一・ジャーナリスト)
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 みやざと・せいげん 1931年、今帰仁村生まれ。専門は米国の対外政策、日米関係。琉球大、国際大学、独協大教授を経て沖縄対外問題研究会顧問を務める。

沖縄VS安倍政権
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