厚労省、四肢骨DNA鑑定へ 糸満の戦没者2体


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 2016年糸満市で発見された、歯はないが大腿骨などが残る2体の遺骨を、厚生労働省が四肢骨からDNA鑑定をする方向で検討していることが3日、分かった。時期は未定。今回四肢骨からDNA鑑定が実現すれば、県内では初めてとみられる。これまで歯のみをDNA鑑定の対象としていた。遺族や関係者からは「全面的な四肢骨からのDNA鑑定につながってほしい」と期待の声が上がっている。

大腿骨がはっきりとした遺骨のそばで手を合わせるガマフヤーの具志堅隆松代表=2016年12月5日、糸満市束里と喜屋武の間に広がる丘陵
2体の遺骨のそばから見つかった印鑑(左)と「宮城」と彫られた折れた万年筆(中央)

 03年から戦没者遺骨のDNA鑑定を進める厚労省は、検体をこれまでの歯から四肢骨に拡大する検討をしており、16年度中に四肢骨のDNA鑑定の実施について最終決定する見通し。厚労省の担当者は3日、身元特定の手掛かりとなる遺留品があった2体を「遺族判明の可能性が高い」とし「試行的に四肢骨からのDNA鑑定を行いたい」と前向きな姿勢を示した。

 2体の遺骨を発見した沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表は「これまで鑑定できなかった歯がない遺骨にとっては大きな一歩だ」と評価。「四肢骨が1本あれば個体性があると考えてほしい。これをきっかけに全面的な四肢骨からの鑑定に向かうきっかけになるのでは」と期待を寄せている。

 昨年、遺骨収集を「国の責務」とする戦没者遺骨収集推進法が成立。厚労省は頭蓋骨が残っているなど「個体性」がある遺骨に限り歯から検体を取ってきた。しかし激戦地となった沖縄では頭部が見つからない遺骨も多く、四肢骨からの鑑定を求める声が多かった。(半嶺わかな)