【島人の目】「五大州」よ、さようなら


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ロサンゼルスから1カ月に1度届く手作り新聞「五大州」。発行者の金城武雄さんは1人で執筆し、編集までを手掛けること53年。A3用紙2枚にぎっしりと南北アメリカの各県人会や県系人の話題のほか、時には基地問題や人種差別など社会問題も取り上げてきた。

 また私生活をユーモラスに紹介したエッセーなどもつづっている。特に夫人やお孫さんとのやり取りはほのぼのとしてほほ笑ましく、つい笑みがこぼれる。また、各県人会や個人からの便りも定期的に届くなど、金城さんの交友関係の広さを感じさせる内容だ。世界中にいる愛読者たちを楽しませていることが分かる。

 新年が明け、11月12日付、636号の「五大州」の新聞を開いた。その中には「本号で『五大州』は終わりとなります。私は94歳になりましたのでリタイアメント(定年)を楽しみたいと思います。長い年月『五大州』をサポートして読んでくださった皆さまに感謝しています」との記述があった。執筆後の印刷から郵送までの労力なども考えると、金城さんのこれまでの偉業に頭が下がる思いだ。

 20年前、取材のためロスの金城さん宅を訪ねた。快く迎えてくれたご夫妻は遠方からの訪問をねぎらってくれた。奥さん手作りのゴーヤーチャンプルーとみそ汁をいただいた。

 米国で差別と闘った金城さんの半生に興味深く耳を傾けたことを思い出す。その後も「五大州」の発行に情熱を注いできた金城さん。最後の新聞となった紙面には各県人会への感謝の言葉が書かれていた。「五大州」よ、ありがとう。そして金城武雄さん、長い間お疲れさまでした。
(鈴木多美子、バージニア通信員)