『okinawan portraits 2012‐2016』 現代社会の風貌写し出す


社会
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『okinawan portraits 2012‐2016』石川竜一著 赤々舎・5400円

 沖縄の現代人を活写した石川竜一の写真集『okinawan portraits 2010-2012』(14年刊行)。沖縄でのポートレート作品として独特な人物像を醸し出していた。石川竜一は、沖縄をがむしゃらに撮影していて三千人を超えるポートレートを撮り続けている。その写真家としての努力は、並大抵のものではない。

 石川竜一は、写真家の勇崎哲史さんに師事し、写真家として着々と力を付けてきた。勇崎さんの優れた写真指導も見逃すことができない。 

 11年に東松照明デジタルワークショップに参加、14年の森山大道ポートフォリオレビュー展に出品するなど優れた写真家たちとの交流も盛んだ。『絶景のポリフォニー』と『okinawan portraits 2010-2012』で木村伊兵衛写真賞などを受賞。写真活動も県内外、海外での活躍も華々しい。 

 その第二弾『okinawan portraits2012-2016』においては、沖縄でのポートレート作品群が拡大解釈されて風景も含めた現代人、ひいては現代社会の風貌を沖縄から眼差(まなざ)しているようにさえ見える。この写真集に添えた石川の言葉を引用する。 

 「たくさんの情報が錯綜(さくそう)するなか、欲だけが膨らみ、僕らはいま、僕ら自身をも消費してしまおうとしている。本当に必要なのは、お金そのものでも、経済システムそのものでもない。存在の証明であり、それを共有するための媒体やシステムだ。それは競えるものであっても、争えるものではなく、奪えるものでもないはずだ。そして、その消費に耐えられる力をもつものもまた、僕らの存在以外にはない」 

 『okinawan portraits2012-2016』は、写真家による現代社会の風貌(ポートレート)を現代人に提示している。石川竜一の現在進行形の「okinawan portraits」が、どのような行方をたどるか、これからも見てみたい。

(俳人、写真家・豊里友行)

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 いしかわ・りゅういち 1984年、宜野湾市生まれ。2006年、沖縄国際大卒。10年、写真家・勇崎哲史氏に師事。15年に第40回木村伊兵衛写真賞と日本写真協会新人賞を受賞。

okinawan portraits 2012-2016
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