空飛ぶ魚介、アジア向け46倍 那覇ハブ利用


この記事を書いた人 志良堂 仁

 沖縄地区税関が20日発表した那覇空港における魚介類の輸出統計によると、2016年は数量で前年比95・5%増の90・9トン、金額で同71・6%増の2億9398万円となり、数量、金額ともに過去最高を記録した。那覇空港を拠点とした全日本空輸(ANA)の国際貨物ハブ事業の開始に伴い生鮮や冷蔵の魚介類の取り扱いは増加傾向にあり、ハブ事業が本格稼働した2010年との比較では数量で約46倍、金額で約38倍となっている。

 沖縄地区税関は「アジア諸国で海産物など日本の生鮮食品の需要が高く、今後も堅調に推移していく」と分析している。一方、業界ヒアリングによると、輸出された魚介類のうち6割は県外から仕入れたもので、香港、シンガポールの飲食店などに提供されている。沖縄地区税関は「県内の魚介類の供給が充実してくればさらなる増加も期待できる」と指摘した。

 那覇空港の国際物流機能の活用を広げようと県は三重や熊本、愛媛といった全国の自治体と連携し、全国の特産品や生鮮食材を沖縄に集めてアジアに輸出する事業を後押ししてきた。本州最北の青森県では「東南アジアへ翌日中配達」をうたい、ANAの物流ハブの陸上輸送を担うヤマト運輸と連携した輸送サービス「A!プレミアム」で、津軽海峡でとれた海の幸を那覇空港経由でアジア市場へと展開する。

 沖縄地区税関は「官民一体となり海外へ積極的なプロモーションを行ったことで販路が拡大している」と評価する。

 県産魚をシンガポールやタイへ輸出している萌(きざ)す(糸満市)の後藤大輔社長は「鮮度が重要な海産物は航空物流で最も可能性がある。アジア市場の需要は旺盛で、沖縄の漁業者と流通側が情報を共有して海外出荷に取り組めばまだ伸びる」と語った。

 輸出先の国別シェアは、香港向けが数量で95・5%、金額で96・6%を占める。2位のシンガポールと合わせて99%を占めた。

 16年の輸出量を品目別に見ると、「その他の魚」に分類される「ハマチ、ホウボウ、トビウオ、イサキ、キンキ、スズキ、シマアジ等」が前年比12・6倍の52・5トンで最多だった。金額でも12・1倍の1億620万円と急拡大している。

 「ナマコ」は32・6%減の25・4トン(1億667万円)と数量、金額とも減少した。「マグロ」は3・8倍の2・8トン(1247万円)と大きく伸びた。「ウニ」(3・3トン)、「カキ」(1・6トン)、「カニ」(1トン)はこの1~2年で那覇空港から輸出されるようになっている。