陶工63年 初の個展 壺屋焼 小橋川清正さん


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集大成となる作品群を前に、陶工人生を支えてきた妻タマキさんと笑顔で並ぶ小橋川清正さん=21日、那覇市立壺屋焼物博物館

 63年にわたり壺屋焼一筋に歩んできた陶工・小橋川清正さんが、79歳にして初の個展を那覇市立壺屋焼物博物館で開いている。2000年の沖縄サミットでは各国首脳の夕食会で使う皿を制作するなど多くの実績を刻んできた。「年を重ねても創意工夫で新たなものを発揮できる」と探求心の尽きない名工の作品が並ぶ。3月20日まで。観覧無料。

 小橋川さんは代々壺屋の陶工の家に生まれた。当時6歳だった10・10空襲では壺屋の防空壕に隠れて難を逃れ、恩納村への避難や収容所での生活を経て壺屋へ戻った後、16歳の時に父・清秀さんの下で本格的に修業を始めた。40歳頃からは「渋みのある赤色」を追究。重厚感のある赤絵線彫り魚文(ぎょもん)のデザインは代表作となった。数多く作ることが技術を鍛えるとの信念を持ち、「自分は何歳になってもまだまだ」と口癖のように語るという小橋川さん。妻のタマキさん(72)は「忍耐強く努力家。隣で見ていると、一生懸命やった人にはかなわないと分かる」とたたえる。

 ここ10年は個展に向け、作品づくりに没頭してきた。一昨年には、国指定重要文化財「新垣家住宅」内にある東(あがり)ヌ窯の修復工事が完了。かつてそこで約20年間作陶し、33歳で独立して構えた工房も東ヌ窯の隣だった。「感謝の意も込め壺屋で個展を」との思いが、情熱をさらに後押しした。展示会場には新たに挑戦した変形の壺などを並べた一角もあり、「改めて焼物に向き合う楽しさを実感した」と小橋川さん。同じ道を歩む息子2人との3人展が次なる夢だと、目を輝かせた。

 5日には東ヌ窯前で小橋川さんのトークイベントがあるが、既に定員に達している。

 個展の問い合わせは同博物館(電話)098(862)3761。
(大城周子)