規定にない入居条件設定 沖縄県営住宅


この記事を書いた人 新里 哲
沖縄県住宅供給公社の入居者募集のしおり

 沖縄県から県営住宅などの管理を委託されている県住宅供給公社(那覇市旭町)が、入居者の連帯保証人の条件について、県条例の規定より厳しい「年収200万円以上」などと設定していることが1日までに分かった。入居者募集のしおりに記載されている。連帯保証人が見つからず入居申し込みを取り下げざるを得なかった人や、連帯保証人が条件を満たさないために収入申告書を受理されず、家賃が3倍に上がると通達された人もおり、公的な支援を必要とする人たちが“門前払い”されている実態が浮かび上がった。

 公社によると、連帯保証人に関する同様の条件が確認できるのは、少なくとも2001年度募集から。15年度は、連帯保証人が見つからず入居を辞退した人が少なくとも1人いた。県条例より厳しい条件が加わった経緯や根拠について公社は「確認できない」としている。県土木建築部住宅課は取材に対し「調査中だ」と答えた。

 公社の16年度募集のしおりによると、条件は(1)できるだけ県内に住んでいる人(2)公営住宅に入居していない人(3)現在の職場で年収が200万円以上ある人(自営業は所得が130万円以上ある人)―など6点。条件の根拠となる「県営住宅の設置及び管理に関する条例」には「入居決定者と同程度以上の収入を有する者」などの記述があるだけだ。

 生活保護を受けながら県営住宅に住む50代の男性は、昨年同居していた父親が他界し、名義承継の手続きが必要になった。その際、公営住宅に住み、年収が200万円以下だった弟を連帯保証人として申請したが、受理されなかった。

 男性は公社に必要書類が提出できないとみなされ、規定で4月からの家賃が3倍になると通達を受けた。「(今の家賃で入居継続できなければ)あてがなく不安だ」と表情を曇らせる。

 男性を支援する安里長従(ながつぐ)司法書士は「公営住宅は本来、社会的選択肢を奪われた人のためにある。年収などの条件は、人々の尊厳を傷つけている」と指摘した。