マルエーフェリー 車いすの乗船断る 「安全確保できない」


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 那覇新港発大阪行きのマルエーフェリーが、脳性まひのため電動車いすを使用している男性の乗船をいったん受け付けたものの、乗船直前になって断っていたことが19日までに分かった。同社は付添者がおらず、乗船時間が40時間に及ぶことなどから「安全を確保できないため」と説明している。男性は県や那覇地方法務局に障がい者差別解消法に基づいた調査や指導をするよう訴えている。

 乗船を断られたのは交通バリアフリー問題活動家の大久保健一さん(40)=兵庫県在住。これまでも障がいを理由に不当な扱いを受けたとして航空会社などに問題提起してきた。

 大久保さんは5、6年前にも同社のフェリーを利用した経験があり、「トイレや移動など全部自分でできる。乗船拒否に正当な理由はなく、障がい者差別に当たる」と指摘した。また、乗船できなかったため数万円の飛行機代と1泊の宿泊費を自己負担することになったとも訴えている。

 同社安全管理対策室の川原義人室長は「障がい者の社会進出を推進しており、会社として差別するようなことは一切ない」とし、乗船を断った理由について(1)同路線に使用されるフェリーが旧式でバリアフリーではない(2)3年前から社内の安全に対する指導を強化したことで乗船の基準が厳しくなった-などを挙げた。

 県子ども生活福祉部障がい福祉課の担当者は今後の対応について「共生社会条例に沿い再発防止に向けた指導を行う」としている。大久保さんは「沖縄は観光地なのに、港や道路などでバリアフリーへの対応が遅れている気がする。障がいのある人が安心して暮らせる社会を実現してほしい」と話した。