沖縄、地価バブルに警戒感も 投資拡大、土地需要は底堅く


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 4年連続で上昇した沖縄の公示地価に対し、県内の経済関係者は人手不足による建築単価の上昇など懸念材料に留意しつつも「県内の土地需要は底堅く推移する」との前向きな見方を示す。好調な観光業や人口増加を背景に拡大基調が続く沖縄経済。好調な景況感に加えて、日銀のマイナス金利により空前の低金利が追い風となる中、活発化する外資や本土マネーの流入によるバブル的な地価高騰を警戒する声も一部にある。

商業地で16年連続の沖縄県内最高価格だった那覇市久茂地のビル前

 「相変わらず県外企業から問い合わせが多いが、空いている土地がないから断っている」。

 工業地で最大の上昇率(9・3%)を記録した糸満工業団地協同組合の担当者は現在の状況を説明する。とりわけ2012年に沖縄西海岸道路(豊見城・糸満道路)が開通して以降、那覇空港までの移動時間短縮など利便性の向上から糸満市、豊見城市とも県外企業からの引き合いが強くなっている。

 県内調査の代表幹事を務めた不動産鑑定士の高平光一氏は「那覇空港のハブ化により流通関係の土地が減っている。土地需要は今後も続く」と見通した。県内工業地は今回から対象となった豊見城以外は調査4地点で軒並み上昇。全体でも4・5%と全国トップだった。3%以上の伸び率を見せたのは沖縄以外に復興需要がある宮城県だけだった。

 バブル崩壊後、国内の地価は下落の一途をたどったが、いち早く回復したのが沖縄で、2014年に上昇に転じて以降、伸び幅を拡大しながら右肩上がりで推移する。

 おきぎん経済研究所は「人口増加や好調な観光を背景にした県内景気の拡大により、住宅地や商業地の需要の高まりが見える。金融機関の低金利などを背景に、資金調達面では好環境にあることも住宅投資や店舗開発を促している」と分析した。一方で、建設業界の人手不足を背景にした建築単価の上昇が不動産需要の足かせとなることが懸念されるとした。

 県建設業協会の源河忠雄常務理事は「公共投資以上に住宅地、商業地ともに民間のニーズが高く、土地に余裕がなくなってきている。建設業界の人手不足感は数字上は落ち着いているが、一部では外国人を使わざるを得ない状況になっている」と語り、現在も人手不足が深刻との見方を示す。

 一方、ある不動産関係者は「那覇市や本島北部を中心に不動産への投資熱は今後も続くとみられるが、一部ではあり得ないペースで地価が上昇している。一般人では手が届かない地域が増えており、警戒して今後の動きを見ていく必要がある」と語る。