障がいは不幸ではない 難聴の姉、支えた妹、双子の春


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2人そろって特別賞を受賞した渡具知姉妹(左・和紀さん、右・和奏さん)=11日、名護市立緑風学園体育館

 【名護】中学を卒業した若者たちにとって「15の旅立ち」などといわれ、さまざまな思いと夢を持って社会へ向けた第一歩を踏み出す3月。11日に卒業式があった名護市立緑風学園9年生の渡具知和紀(かずき)さん(15)もその一人。彼女は、昨年9月に開催された第38回県少年の主張大会で「聞こえない それが私らしさ」の演題で意見を発表し、見事、最優秀賞を受賞した。国頭地区から13年ぶりの快挙となり、卒業に際し特別賞が授与された。

 渡具知さんは2002年1月17日に二卵性双生児で誕生し、2歳半の頃聴覚に障がいがあることが判明した。しかし、これまでろう学校ではなく普通学校に通い、健聴者と共に勉強や部活動、琉球舞踊の習得などに取り組んだ。琉舞や演劇の稽古では妹の和奏(わかな)さんのサポートも受けつつ、床の振動やリズムに五感を研ぎ澄ました。難聴というハンディを悟られたくないということもあって、手話を使うことには抵抗があった。

 しかし、堂々と手話で話す先輩やろう学校の体験授業での教師との出会いが彼女を大きく変えた。独学で手話を学び前向きに生きる力を得て「健聴者と聴覚障がい者の懸け橋になりたい」との思いが芽生え、将来自分もろう学校の教師になる目標ができた。4月から県立沖縄ろう学校高等部への進学も決まった。

 二人三脚でやってきた和奏さんは「別れるのは寂しいが、今はそれぞれの道へ進むわくわく感の方が強い」と将来を見据えた。「障がいは不便だが、不幸ではない」との思いを多くの人に伝えるため、和紀さんは「以前はハンディを隠すために費やしたエネルギーを、今後は二つの世界の懸け橋になるため堂々と全開したい」と力強く語った。(嶺井政康通信員)