沖縄メダカ、交雑進む 県外産放流で「遺伝子汚染」 琉大・今井准教授


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リュウキュウメダカ

 沖縄県外から沖縄へ持ち込まれたミナミメダカが池などに放流された結果、「琉球型」と呼ばれる固有の遺伝系統の群れをつくる県内のミナミメダカ(通称・リュウキュウメダカ)と交雑し、遺伝的固有性が失われる「遺伝子汚染」が進んでいることが27日までに、琉球大理学部の今井秀行准教授(集団遺伝学)らの調べで分かった。調査ではかつて沖縄本島を中心に幅広い地域で生息していた県内のリュウキュウメダカ生息地が10カ所程度に減っていることも判明。今井准教授は「沖縄の個体群自体が絶滅の危機にある。数十万年かけて形づくられてきた遺伝子の歴史は簡単に消えてしまう。善意でも放流は絶対にしないでほしい」と話した。

今井秀行准教授(集団遺伝学)

 今井准教授らは2003年~10年にかけて、県外16カ所、県内8カ所のミナミメダカの標本を集めて遺伝子情報を解析した。その結果、県内8カ所のうち、南城市知念のため池で、県外産のミナミメダカの一種であるクロメダカやヒメダカと交雑が進み、沖縄固有の遺伝系統の錯乱が起きていることを発見した。

 ヒメダカやクロメダカは小学校の教材として広く使われている。一方、メダカ自体が環境省のレッドリストで絶滅危惧2類に指定されており、保護の観点から個人や団体によって自然に放流する動きもある。その結果、県外では在来のヒメダカの遺伝情報の錯乱が発生している。今回、県内でも在来のメダカとの交雑を確認した形だ。

 今井准教授は「見た目での区別が困難な県内外のミナミメダカを簡単に区別可能になり、今後の県内固有系統の保全にも役立てられると思う」と語った。

 研究論文が1月に出版された日本生物地理学会の会報に掲載された。