沖縄県は7日までに、沖縄戦で日本軍直轄の部隊に所属し、亡くなった朝鮮人2人の「平和の礎」への追加刻銘を決めた。朝鮮人の刻銘は2010年度に1人が追加されて以来となる。沖縄戦の朝鮮人被害者を調査している「沖縄恨(はん)之碑の会」(安里英子代表)が仲介して県に申請し、3月中旬の刻銘審査会で追加が決まった。一方、沖縄戦で朝鮮人犠牲者は平和祈念公園内にある韓国人慰霊塔には1万人余が犠牲になったと記されているが、平和の礎への刻銘は16年度までで447人にとどまっており、刻銘が進んでいない。
追加刻銘が決まったのは第32軍直轄の特設水上勤務第104中隊に配属されていた権云善(クォンウンソン)さんと朴熙兌(パクフィテ)さんの2人。
「沖縄恨之碑の会」の沖本富貴子さんによると、権さんの息子・水清(スチョン)さんは2回来沖し、県に刻銘を求めたが、死亡認定書などがないために、刻銘が認められなかった経緯がある。そのため、恨之碑の会が県議会に陳情を出したり、署名活動を展開したりした結果、認められた。
沖本さんは「県が門前払いをせずに申請を認めたことは一歩前進」と評価しつつも「そもそも政府は朝鮮人の犠牲者を調べておらず、切り捨てられている。沖縄戦戦没者の氏名を永遠に刻むという平和の礎の目的からすると、朝鮮人の犠牲者に対して弾力的に認めるべきで、もっと県は積極的になってほしい」と県に対して要望した。
県の「『平和の礎』に係る刻銘の基本方針」によると、朝鮮人の戦没者について「関係者の協力を得て、厚生労働省の資料を基に整備することができる」としている。
だが、沖縄戦に動員された朝鮮人は戦後に生死の確認がなされず、沖縄戦での戦死を証明する公的書類が遺族に届いていないために、申請が出しにくい現状がある。
2人の朝鮮人の名は、慰霊の日の6月23日までに刻銘される予定。