郷土学習に副読本を 教員9割「活用せず」


この記事を書いた人 琉球新報社
副読本問題を巡る三木健氏(右)の報告を聴く参加者ら=19日、石垣市登野城の市健康福祉センター

 【石垣】石垣市教育委員会が八重山の歴史・文化を学ぶための中学生用の副読本配布を2017年度は見送ったことを巡るシンポジウム「郷土を学ぶ機会を子どもたちに」(主催・子どもと教科書を考える八重山地区住民の会)が19日、市登野城の市健康福祉センターで開催された。約60人が参加した。登壇者らは歴史の直視や郷土を学ぶ機会を求めて、発刊継続を求めた。

 副読本の監修・執筆者の三木健氏は、配布が取りやめになるまでの経緯を報告した。「南京事件」や「従軍慰安婦」に関する副読本の記述が問題視されたことで配布が見送られたとして、「日本に不都合な事実を削るのは、戦争をできる国にする条件整備の一つだ。自衛隊配備問題もある中で、時代の動きを反映した問題だと思う」とした。その上で「歴史を見詰め直すことで近隣諸国との関係も考えられる」と指摘した。

 副読本の在り方を探るパネル討論には、副読本編集委員長を務めた田本由美子氏ら3氏が登壇した。登壇者らは八重山の歴史や文化を深く学べるとして副読本の継続発刊の必要性を強調した。

 一方、富野小中学校の上原邦夫教諭は副読本に関する市教委のアンケートで、約9割の教員が副読本を「活用していない」と回答したと報告。「教材研究する時間がない」ことなど、活用が難しい背景を説明した。

 会場からは副読本の継続発刊を求める声が相次いだほか、退職教員との連携により副読本活用を図れないかなどの提案もあった。