中国語対応追い付かず 業者正当化「需要高い」 台湾客向け白タク


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台湾人クルーズ客を乗せる「白タク」=那覇市若狭バース(一部画像を処理しています)

 那覇市の若狭バースに寄港したクルーズ船「スーパースター・アクエリアス号」(約5万トン)から乗客が下船する中、名前を書いた紙を掲げ、那覇クルーズターミナルから出る台湾人客を待つ集団がいた。約10人はクルーズ客を迎えるレンタカーの運転手で、ほとんどが沖縄県内在住の中国出身者らだ。中国人の若い男性は「お客さんを乗せるには特別な運転免許や資格は要らない。自分は一般(普通)免許しか持っていない」と第2種免許を持っていないことを明かす。

 千人以上の台湾人客らは次々と下船し、観光地に向かう。バスツアーはもちろん、タクシーや徒歩など、観光客はそれぞれの交通手段を選ぶ。クルーズ客の滞在は約8時間と限られており、観光地を巡るのにレンタカー需要は高い。さらに中国語で会話できる運転手にも需要があり、対応が追い付いていないことが「白タク」横行の背景にある。

 台湾人クルーズ客が利用するレンタカーは、通常台湾の旅行会社が提携する県内旅行会社を通じて手配する。クルーズ客が到着する日に車をバースで直接引き渡すか、レンタカー会社の運転手がクルーズ客を車に乗せて観光地へ案内する。

 2016年1月から「白タク」を始めた業者によると、今年に入ってからクルーズ客のレンタカー需要が急増しており、1回の寄港で5台の注文が来ることもある。「クルーズ客の滞在時間が短いため、バースと観光地の間をレンタカーで送迎する需要が高まっている」と説明し「われわれ以外にも同じ事業をやっている同業者は多くいる」と白タク行為の常態化を明らかにする。

 同じ業者は「これまで2種免許を持つ運転手を雇い、海外クルーズ客を県内観光に案内したが言葉が通じずトラブルになった事例もあった。お客さんの満足度を向上させるためだ」と需要に応えるための対応だと正当化した。また「クルーズ客は大勢で来るので、タクシーでの対応は足りない。中国語ができる運転手であれば、お客さんも楽しんでもらえる」と話した。

 県ハイヤー・タクシー協会の湖城秀實会長は「白タク行為が行われているとは耳にしていた」とし「沖縄観光にとって悪影響だ。観光客が港に降り立ってからの対策では遅い。台湾政府も含め、国や県、警察間での対応が必要だ」と指摘した。