沖縄初、国産米で10年古酒 宮古・伊良部の宮の華酒造が「通り池」


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県内初の国産米を原料とした古酒を販売している下地さおり社長(前列右)率いる宮の華のスタッフ=1日、宮古島市伊良部

 【伊良部島=宮古島】宮古島市伊良部の酒造所、宮の華(下地さおり社長)は、国産ジャポニカ米を原料とした10年古酒「通り池」を4月から販売している。国産米を原料にした泡盛を熟成させ、県内初の古酒を造った。通常輸入タイ米(インディカ米)を原料とする泡盛業界の中で意欲的な取り組みだ。商品完成までの道のりには、下地社長の強い思いと社員の試行錯誤があった。

 きっかけは2006年、下地社長が関東で食べた無堆肥、無農薬、無肥料の熊本県産「ヒノヒカリ」のおにぎりだった。味に“一目ぼれ”した下地社長は、泡盛の原料にすることを決意。社員に提案したが、ノウハウがなくコストも上がるため難色を示された。下地社長は手製のおにぎりを振るまったり、従業員を熊本に連れて行って栽培現場を見学させたりして、理解を得ていった。

 製造担当の山原作栄さんは「正直びっくりした。米を蒸す段階からタイ米とはやり方が異なっていた。一からの手探り状態だった」と当時を振り返る。当初は国産米を蒸し器から取り出し、たなざらしにする作業のみで3時間かかった。通常のタイ米なら40分程度で終わる作業だった。

 試行錯誤の末、納得できる味の酒ができるまで2年を費やした。08年から「うでぃさんの酒」として販売を始めた。すると県内外で賞を獲得し評判に。製造当時からタンクに詰めて熟成を重ねた古酒を「通り池」として今年4月から販売している。

 下地社長は国産米泡盛にこだわった理由について「酒税軽減措置が切れた際の危機感を当時から持っていた。無謀かもしれないが優遇措置が切れてもやっていける商品開発を目指した」と語る。その上で「ここ2~3年でようやく国産米泡盛の認知度が高まってきた。大量生産はできないが、原料米にこだわった酒を造り続けたい」と意気込んだ。(梅田正覚)