労働生産性が低いのはなぜ? IT関連が県民総生産を押し上げず 【貧困雇用 沖縄経済を読み解く(9)】


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 沖縄は労働生産性が全国一低く、近年、全国との差が拡大しています。

 厚生労働省の2014年の労働市場分析レポート(第39号)にあるように、県民所得(賃金)の低さは、労働生産性に起因しているという指摘は説得力があります。

 なお押さえておきたいのは、全国で見ても中小企業の労働生産性の平均値は、大企業における労働生産性の平均値を下回っているのであり、中小企業、個人経営の企業が多いのであれば、相対的に労働生産性が低くなるのはある意味必然となります。

 また、同レポートにある労働生産性は、名目県内総生産÷県内就業者数で算出していますが、労働時間は算出根拠に入っておらず、労働時間と何の相関関係もありませんので、ワークシェアが進んだ地域は就業者数が増えるので労働生産性は低くなります。また、沖縄県の13年度の県内総生産(GDP)は実質4兆593億円で、前年度と比較した経済成長率は3・7%増となり、9年連続のプラス成長でした。

 県内就業者数についてみてみると、1997年から2013年の間、就業者が10%以上増加したのは全国で東京都と沖縄県のみです。沖縄県では就業者が97年の56万6千人から13年には64万2千人に13・4%増加しているのに対し、全国平均はマイナス3・8%、類似県(財政力指数0・3%未満=2013年度=の類似10県)はマイナス10・6%と減少していることも留意すべきです(総務省統計局「労働力調査」)。

 沖縄県における労働生産性は、全18産業中、製造業をはじめとする5産業において、全国平均より40%以上も下回っています。観光に並ぶリーディング産業と位置づけられているコールセンターなどの情報通信業においても約23%下回っており(経済産業省・地域経済分析、2015年。次回に沖縄県の産業別労働生産性の比較を掲載)、労働生産性の分子である名目県内総生産を大きく押し上げる要因とはなっていないのが現状です。

 つまり、1998年に発表した「マルチメディアアイランド構想」とその後の振興計画によって、情報通信産業を沖縄の戦略的産業の一つとして位置付け、IT関連産業を沖縄に誘致し、そこで働く若者の雇用の場を確保したというプラスの評価の一方で、税制や補助などの優遇策のほか地価や人件費の高い首都圏に置いておくよりも、沖縄に置いた方が大幅にコストが削減できるという進出および誘致の目的がゆえ、そして実際に地元企業の低い給与水準が賃金設定の目安にされることもあいまって低賃金や非正規雇用の維持固定化という悪循環を招き、県民総生産、ひいては労働生産性を押し上げる大きな要因とはなっていないというジレンマが指摘できるのです。
(安里長従、司法書士)