「冊封琉球全図」は徐葆光作 国立劇場おきなわ発表


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御冠船踊が描かれた「冊封琉球全図」の中秋宴図(「国立劇場おきなわ10年誌」より)

 国立劇場おきなわの茂木仁史調査養成課長と沖縄県立芸術大学の森達也教授は17日、同劇場で会見を開き、1719年の冊封の様子を絵と解説文で記録した「冊封琉球全図」の著者が、同年の冊封副使・徐葆光(じょほこう)であると発表した。同図が清の康煕帝に献本した唯一の肉筆本で、徐葆光の著書「中山伝信録」は同図の一般向けの複製本であると主張し、同図の重要性を強調した。

 「冊封琉球全図」は中国の北京故宮博物院が所蔵している。「中山伝信録」の内容には冊封使を歓待する御冠船踊の舞台構造などに謎があり、同図はその一端を解決する資料だった。だが著者や来歴が明らかでなく、現物が海外にあることもあり、詳細な解析・研究はされていなかった。

 茂木氏と森氏は昨年、故宮博物院で冊封琉球全図を調査した。「中山伝信録」にはその基となる皇帝に献上した本の特徴が記されており、同図と一致したという。また「中山伝信録」と同図の絵を比較し、同図を基に「中山伝信録」が作られたと考察した。

 茂木氏は、故宮博物院の学芸員が同図の絵について「画工の描いたものだろう」と推測したことを紹介。その上で、監修者である冊封副使の徐葆光の著作としてもよいと論じた。

 茂木氏と森氏は「『冊封琉球全図』は琉球の芸能の原点を知る上で非常に重要だ」と強調し、著者を明らかにしたことで今後さらに同図の研究が進むことや日本での復刻に期待した。

 両氏の研究は3月に県立芸術大学紀要でも発表されれた。6月8日午後7時から国立劇場おきなわで開く公開講座でも紹介する。講座の問い合わせは同劇場調査養成課(電話)098(871)3318。