国、既成事実化狙う 石垣駐屯地配置図案提示


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
中山義隆石垣市長(左)に石垣島への陸上自衛隊配備の必要性を訴え、施設配置案を示す若宮健嗣副大臣(右)ら=17日、石垣市長室

 若宮健嗣防衛副大臣がこのタイミングで中山義隆市長に石垣駐屯地(仮称)の施設配置図案を初めて示した背景には、2018年度予算の概算要求前に石垣市議会の6月定例会での議論を促し、駐屯地受け入れの“既成事実化”を狙う思惑がある。

 防衛省は当初、尖閣諸島を市域に含む石垣市は軍事的脅威が拡大する中国の動きをにらみ陸自配備に寛容とみていた。だが、根強い反対運動があり、容認派市議の一部が「海自誘致」を掲げるなど意見が細分化していることを念頭に「変な方向に進みかねない」(防衛省関係者)と地元への説明を最優先した。昨年末の中山市長の受け入れ表明を受け、配置案を早急に市に提示することになった。

 今回示された配備予定地には、配備推進派の市議の所有地が大きく重なる。ただ、当の市議は「詳細も(防衛省から)伝えられていない」としており、配置案提示を急ぐあまり、作業を拙速に進めた姿が浮かぶ。

 防衛省が地元の反応を強く意識するのは宮古島市の前例があるためだ。宮古島市は配備2候補地のうちの一つを断念することになり、配置案が大幅に書き換えられた。結果として予定地に弾薬庫や訓練場がなく、防衛省は別の用地を探している。

 石垣での本格的な計画着手はこれからとなる。防衛省関係者は「宮古島の二の舞いにならないようにしなければ」と不安も口にする。

 市への図面提示を副大臣自らが行ったことに、配備に反対する野党市議は「着々と配備に向けて詰めているのがはっきりした」と危機感を示す。少数野党の中、野党側が起死回生の一手として狙うのは配備の賛否を問う住民投票の実施だ。中山市長と距離を置く保守系議員と、水面下での調整が続く。

 野党側が住民投票提案のタイムリミットとするのは6月定例会。来年3月の市長選に近い時期では身近な生活課題に市民の関心が向かい「陸自配備問題に焦点が絞られず、住民投票が盛り上がらない」との懸念がある。市長に距離を置く保守系議員の“立ち位置”の変動も懸念材料となり、早期実施を目標に掲げる。

 配備に反対する市民団体側も住民投票に向けた署名運動を展開し、陸自配備問題への市民の意識浸透を図る構えだ。

 一方、市長と近い保守系議員は市長と同様に「国の政策に関わる問題に住民投票はそぐわないのではないか」と、住民投票実施に否定的だ。住民投票による配備賛成派の勝算についての回答を避けつつも「投票率が低ければ、住民の意思が示されたとは言えない」と語り、早期実施に照準を絞る野党側をけん制した。
(大嶺雅俊、仲村良太)