「はいたいコラム」 田舎の未来は鳥取にある


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 島んちゅのみなさん、はいたい!地域や集団の中で人がつながる仕組みをつくる「コミュニティデザイン」が注目されています。このコミュニティデザイナーの第一人者・山崎亮さんが著した「縮充する日本 『参加』が創り出す人口減少社会の希望」(PHP新書)を読みました。

 「縮充」とは、もともとは毛織物などを水に浸してもむと縮んで小さくなる現象のことで、縮んだ分だけ繊維がからみあって強く丈夫になるそうです。

 日本は人口減少で2100年には5000万人になることが国の統計でも出ていますが、果たしてこれは憂いだけでしょうか?縮んでもギュッと充実した「縮充」ならば、未来に希望は持てます。そのカギが「参加」だというのです。

 日頃、農業体験や農村ツーリズムで都市の人がもうちょっと農的な営みに「参加」すれば、農業・農村は活気づき、都市住民も自分の食べものの問題を自分ゴトとしてとらえるだろうと考えている私にとってこの本は、とてつもなくたくさんの学びと感動と希望を与えてくれました。

 そんなわけで、山崎亮さんが部長を務める「地域創生部」という実践塾の鳥取ツアーに参加する機会を得ました。鳥取といえば、日本一人口の少ない県です。つまり、日本がこれから向かう課題に向けて、田舎の未来は鳥取にある!とも言えるのです。2泊3日のツアーで見聞きしたものはどれも地域の個性にあふれていました。

 園舎はなく、一年中子ども達が森の中で過ごす「森のようちえん」、資源循環でパンを作る「タルマーリー」、災害時の避難先としてもうひとつのふるさと「疎開保険」を提供する智頭町、空き家活用で地域づくりの総務大臣賞も受賞した鳥取市鹿野町、大学生が地域に移住して体験民泊をする鳥取市用瀬町、町のテレビで地域を楽しくする大山町の大山テレビ部。八頭町では、若桜鉄道「隼駅」がスズキのバイク「隼」をはじめ、ライダーの聖地になっていることから、ライダーのための宿泊施設とカフェ食堂をはじめた若者に出会いました。私がもっとも感動したのは、彼らがUターンで起業したということです。子供時代、遊んだ野山や同級生のいるふるさとを愛する気持ちなしで、ふるさとの創生は成し得ません。地域づくりは、今そこに暮らす人づくりだということを改めて学びました。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)