『琉球独立への視座』 内側から「独立」捉え直す


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『琉球独立への視座』里正三著 榕樹書林・972円

 私が独立論者になったのは県費留学生として過ごしたロンドンだった。研究するしまくとぅばについて語る度、琉球の歴史や現在の政治状況について触れるたび、「それで、独立支持者は何パーセントですか?」と聞かれ続けたが、そのたびに「居酒屋独立論とやゆされていて、独立は夢物語ですよ」と苦笑いで返していた。

 しかしある時、スコットランド人の友人に「私たちもパブで独立を語るわよ、併合され不当に扱われてきた地域が独立を語るのはごく当たり前のことでしょ?」と指摘され、そろそろ敗北主義者はやめて正面から琉球の未来について考えてみようと思うようになった。

 本書では琉球独立に関する著者の視座が展開されている。サブタイトルにある通り「歴史を直視することは未来を展望することにつながる」のだが、私たちの多くは学校教育において琉球の歴史を学んだ経験がなく、現代史や世界経済を考える時にも私たちが生きるこの琉球を辺境の島々として捉えてしまうことが多いのではなかろうか。

 本書を通して、しまくとぅばを話すとスパイとして処刑された沖縄戦や、ポツダム宣言で日本が琉球に対する領有権を放棄した事実などを学び、世界や日本の経済や政治を琉球の視点で内側から捉え直してみることは、独立という一つの選択肢を選ぶ意義について考えるきっかけになるだろう。

 また、第6章では「中国脅威論」が論じられている。現在、輸出入や製造、観光など密接な関係があるにもかかわらず「中国の脅威」の名の下に琉球弧に新たな自衛隊配備が着々と進められており、島々の軍事化に対する強い懸念の声も上がっている。去年来沖した米中関係の専門家で、軍事化を憂慮する科学者同盟のグレゴリー・カラッキー博士が「米国から見ると理解しがたい『中国脅威論』だが、沖縄にもそれを信じている人がいるとは驚きだ」と話していたことを思い出し、中国脅威論が琉球にもたらすものの意味について考えたいと感じた。

 (親川志奈子・琉球民族独立総合研究学会共同代表)

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 さと・しょうぞう 1949年大阪市生まれ。75年に沖縄移住。琉球民族独立総合研究学会会員。会社経営の傍ら、市民運動や平和運動に参加する。

琉球独立への視座
里正三 著
A5判 125頁
¥900(税抜き)