那覇市小禄の住宅街の一角に伊江島出身の大城信也さん(46)が開く食事処「伊麺しょり」がある。この店にはもう一つの顔がある。伊江島の親元を離れて暮らす小禄高校野球部の男子生徒が夕食に立ち寄る“癒やしの場”としての顔だ。部活帰りでおなかをすかした球児の胃袋を満たし、体調管理を含めて親たちを安心させたいとの思いから始めた。2010年の開店以来夕食を提供し、7年になる。
店は同校から自転車で5分以内の距離にある。店の近所で1人で暮らしたり、きょうだいと生活したりする高校球児が部活帰りに店を訪れる。
現在、同校3年生の阿波根昌李さん、大城旭さん、2年生の山城京祐さん、1年生の玉城和実さんの4人が通う。店の奥の座敷が指定席。席に着くとほっと一息、笑みがこぼれる。生徒らの親と契約を交わし、月曜日の定休日以外、夕食を提供する。大城さんは生徒4人の表情をうかがい、そっと見守っている。
4人は「海鮮料理、焼き肉、ハンバーグ、手打ちそばなど何でも最高においしい」と、それぞれ丼飯を頬張りながら話す。間もなく甲子園出場を懸けた大会が始まる。「結果を出して恩返しする」と目を輝かせる。
9日には、大城さんの中学校時代の担任の宮城孝雄さん(67)や伊江村の宮里徳成教育長らが来店、生徒4人を激励した。山城さんの父親、直也さんは店主の大城さんと同級生。同席した山城さんの母親、佐百合さん(48)は「(大城さんは)那覇の親代わり。長男も世話になり感謝してもし切れない」と謝意を述べた。
「ごちそうさまでした」と一礼して店を出る4人に大城さんは「頑張れよ」と励ましの一言を掛けた。明日に向かって突き進む球児を今日も送り出している。
(中川廣江通信員)