労働生産性を上げるには? 雇用の「質」改善と起業家育成、人材育成がカギ 【貧困雇用 沖縄経済を読み解く(10)】


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄の主要産業について産業別労働生産性を見ると、全国平均に比べて「製造業」をはじめとするほとんどの産業で労働生産性の水準が低くなっており、製造業の産業構造を見ると、全国に比べて「食料品」製造業の割合が突出して高く、機械関係などその他の製造業の割合は低くなっています。

 労働生産性を向上させるためには、沖縄の産業構造の詳細な分析が必要になります。

 例えば、情報通信関連産業は、観光・リゾート産業と並ぶ中核的なリーディング産業としての振興が目指され、全国一の集積地(2015年1月時点で76社98事業所)となっています。

 そして、同関連産業の全雇用の約66%に当たる約1万7千人がコールセンターで働いていますが、非正規従業者の割合は約70%、1年間で見た離職率は約40%に及びます(内閣府沖縄総合事務局15年度沖縄におけるコールセンターの現状調査)。

 内訳を見ると高付加価値サービスの提供より、低コストサービスを提供する事業所で離職率が高く、資格取得支援や人材研修、正規雇用者では退職金を導入している事業所で離職率が低く、非正規雇用者に対しては、昇給、交通費補助などを導入している事業所で離職率が低い傾向があります。

 情報通信業の推進により完全失業率の改善には一定の成果を収めていますが、次の段階として、賃金を上げる、子育て・介護などライフスタイルに合わせた福利厚生として働き方の自由度を上げる、正社員の枠を増やす、地元採用のマネジャーを増やすなどの取り組みが必須だといえます。

 また、コールセンターの約80%が県外からの立地企業で、支社・支所などの事業所であることから、沖縄における事業継続を担保するものではないことも留意すべきです。

 持続可能な自立経済を目指すためには、県外から企業を誘致するだけでなく、沖縄市が行っているスタートアップカフェのような起業家育成、人材育成を支援する取り組みの広がりが必要ではないでしょうか。

 沖縄県の労働生産性向上のためには、県や労働局が取り組みを進めている県正規雇用化起業応援事業や県人材育成企業認証制度、キャリアアップ助成金などの雇用政策の展開、そして企業は人材育成の強化や雇用管理の改善を推し進め、雇用の「質」を高めていくことがとても重要です。

 今沖縄に必要な視点は、社会風土論や文化論ではなく、その構造をきちんと正視することです。雇用政策の展開とともに沖縄の低賃金・不安定雇用を改善するための産業振興施策に具体的にどう取り組んでいくかという主体的な知恵が問われているといえます。
(安里長従、司法書士)