沖縄の製造業の構造 公共事業費の約半分は本土ゼネコンへ 【貧困雇用 沖縄経済を読み解く(11)】


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 沖縄の低賃金を改善するためには、産業ごとに労働生産性向上のための課題を分析し、その向上に取り組むことが重要です。沖縄の産業別就業者構成をみると、全国に比べ「建設業」「宿泊・飲食サービス業」「医療・福祉」「サービス業」「公務」の割合が高くなっています。やはり特筆すべきは全国に比べ製造業就業者が圧倒的に少ないということです。

 戦後、沖縄の多くの農地は米軍に接収され、また、産業構造も本土復帰までは日本政府の政策が及ばなかったので、社会生活基盤整備も産業基盤整備も絶対的な遅れが生じ、弱い物的生産力しか育ちませんでした。

 本土は、鉄道、道路港湾などの産業基盤が整備され、一方沖縄は、経済社会の発展のための十分な資本投下がなされませんでした。沖縄分離統治決定(1950年2月)がされ、日本政府からの援助もなく(援助開始は1963年度から)、当時の高度経済成長につながった日本の産業保護政策(1ドル=360円)の一方、沖縄では米軍の物資調達のために1ドル=120B円が設定されました。付加価値額の大きい製造業が育成される状況にはなく、役場などの政府機関や米軍基地以外に大規模な雇用が不可能となったことで、本土とは大きく異なる基地依存型輸入経済構造となりました。

 復帰後、現在に至るまでに基地依存経済から抜け出しましたが、沖縄は変わらぬ基地問題、それと一体となった沖縄振興体制(基地温存、本土還流のザル経済、ハード偏重、財政依存誘引)という構造的な問題に起因されています。最近では、政府は高率補助等と基地の「リンク論」を露骨に言及するようになりました。

 日本が高度経済成長を手中に収める中、沖縄は同じ第2次産業の中でも莫大(ばくだい)な基地建設需要への対応から建設業が中心となり、復帰後は政府の振興策による公共事業が建設業の維持・増加を支えてきました。これまでの沖縄振興費11兆円のうち実に88・7%が公共事業に使われたといわれています。2009年11月の参議院予算委員会では、当時の前原誠司沖縄担当相が「沖縄の公共事業では、事業費の51%しか地元に落ちていない。49%は本土に引き上げられている」と答弁し、公共事業費のおおよそ半分程度は大手ゼネコン等を通して本土に還流していることを指摘しました。

 現在の第5次振興計画である21世紀ビジョンは主に観光業と情報通信産業によって組み立てられていますが、復帰当時から製造業の構成比は減る一方となっています。先日21世紀ビジョン基本計画改定により、子どもの貧困対策としてライフステージに即した切れ目のない総合的な各種施策が盛り込まれました。一方で、基盤整備という名の公共事業も大きな比重を占めます。沖縄の相対的貧困の解消のためには、県内格差の是正や経済自立にふさわしい産業や経済の発展につながるための根本的かつ具体的な議論を深めていくことが重要です。
(安里長従、司法書士)