台湾移民描く「海の彼方」 石垣で試写会


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この記事を書いた人 琉球新報社

 【石垣】台湾から石垣島に移民として渡った女性とその子・孫にカメラを向けたドキュメンタリー映画「海の彼方」(黄胤毓監督)の試写会が20日、石垣市新川の船蔵の里で開かれた。関係者ら約120人が来場し、歴史に翻弄(ほんろう)されながらも島で生き抜いてきた女性と、女性の人生から自らのルーツを再認識していく子や孫の姿を真剣なまなざしで見詰めた。

試写会に出席した黄胤毓監督(右)と主人公の玉木玉代さん(左から2人目)、玉木さんの次男の茂治さん(右から2人目)、次女の美枝子さん(中央)、三女の吉原美佐子さん=20日、石垣市新川の船蔵の里

 台湾では既に公開されている。試写会には映画を教材として利用したことがきっかけとなり、修学旅行で来島した台湾彰化市の中山国民小学校の児童16人や教員・保護者も訪れ、大浜中の生徒や台湾にルーツを持つ子どもたちらと交流した。

 映画の主人公は、戦後の混乱期に夫と共に石垣島に渡ってきた玉木玉代さん(88)。親族が集結した玉木さんの米寿祝いや台湾の親族と再会するため子や孫と渡った「里帰り」の風景を切り取り、玉木さんの歩んできた人生や、自身のルーツに揺れてきた移民2世となる子どもたち、ルーツを確認していく3世の姿を描いている。

 中山国民小6年の荘艾琳(チョアンアイリン)さんは「石垣島には台湾からの移民がたくさんいることを知り、とても親しみを感じる。『海の彼方』は隠れた歴史を記録しており、見る価値があると思う」と話した。

 試写会後、玉木さんは「台湾の子どもたちが映画を見に来てくれたことは心に残る。うれしくて言葉にならない」と感慨深げに話した。

台湾民謡「雨夜花」を披露する台湾彰化市の中山国民小学校の児童ら=20日、石垣市新川の船蔵の里

 玉木さんの次男の茂治さん(60)は「この映画を見ることで、自分たちのルーツを少しでも考えてもらいたい。ルーツをひもとくことで、なぜこの世に生まれたかが少しは分かるのではないか」と語った。

 「海の彼方」は8月以降全国で上映される予定。石垣島では7月26日から5日間、先行上映される。