親の厳しい雇用環境は、児童生徒の日常や進路に影を落としている。ユニホーム代など費用のかからない部活動をあえて選ぶ。希望する進学先を最初から諦める。県の子どもの実態調査で、子育て世帯の厳しい現実が明らかになった。親たちは「給付型奨学金が頼り」「児童手当を高校卒業まで延ばしてくれたら」などと語り、子育ての基盤を整えるような支援の充実を望む。
小学生から高校生まで5人の子がいる本島の50代の母親は、契約社員としてシフト制のフルタイムで働いている。高校生の子どもは雑貨や衣料など友達と同じ物を欲しがる。「無理してでも買ってあげたい」との親心で出費はかさむが、自分の昇給はない。夫は歩合制で収入は安定せず、ボーナスもない。年によって非課税になったり、ならなかったりするため、就学援助も利用したことがない。
那覇市に住む50代の母親は、2人の息子が幼少のころに離婚し、働きながら息子たちを育ててきた。現在、長男は大学生で次男は高校生。母親はパートで働いている。
家計の厳しさを感じながら育ってきた長男は、中学校時代、用品代のかからない部活動を選んだ。高校入学後は徒歩で通学。母親にとって苦い思い出は長男が高校生だったころ、担任からかかってきた電話だ。約20万円する修学旅行への参加を長男が「すごく悩んでいる」という内容で、母親は急きょ、修学旅行費を捻出し、長男を送り出した。「心が痛かった」と振り返る。
息子たちは高校生向けの給付型奨学金を受給し、学用品を賄い勉学に励んだ。2人とも塾に通わずに希望の学校に進学。子どもの成長が生きる力で「好きな分野を目標にしてやってほしい」とエールを送る。
経済的な厳しさは進路にも影響する。本島の高校教諭は「経済的な理由で進路を諦める子は毎年必ずいる」と明かす。進学を希望していても、入試となると検定料を準備できない、合格しても入学金が足りないという生徒が出てくるという。「子どもは親に気を使って家でお金の話ができていない」一方、「親は仕事などで不在。親と直接話そうにも電話がつながらない」と仕事に追われる親の様子に言及した。