沖縄戦「逃げた知事」舞台化 那覇で10日、「歴史見直す機会に」


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演劇について話す演出の当山彰一さん(左)と脚本の安和学治さん=那覇市内

 沖縄戦直前の沖縄に赴任し戦死した県知事島田叡(あきら)の前の知事、泉守紀(しゅき)を描いた演劇「いっとーばい~逃げた知事 泉守紀~」(おきなわ芸術文化の箱主催)が10日、那覇市ぶんかテンブス館で上演される。野里洋氏の著書「汚名・第二十六代沖縄県知事泉守紀」を基に、泉の知事就任と更迭、その後の半生を描く。

 脚本を担当した安和学治さんは、沖縄戦の時に北部疎開を拒んだ知事がいた話をラジオ番組で知った。そこで疑問に思ったことが作品作りにつながった。

 調べていくうちに、疎開によって北部地域が食糧難に陥ることを泉は危惧したことや、軍の慰安所設置に反対の姿勢だったことなどを知る。「逃げた知事と片付けてはならないと思い、劇団員として語り継ぐべきだと感じた」

本番に向けて稽古する出演者

 演出を担当する当山彰一さんは「なぜ島田だけ英雄化され、泉は逃げた知事というレッテルを貼られたのか、見て考えてほしい」と語った。

 観客を巻き込みながら当時の状況を演じるなど趣向を凝らした演出となっている。「汚名」を書いた野里さんは「若い世代が取り組んでいることに敬意を表したい。共謀罪が審議され、政府が基地建設で圧力をかける今、歴史を見詰め直すきっかけとなってほしい」と話した。(金城実倫)

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 「いっとーばい~逃げた知事 泉守紀~」(野里洋原作、安和学治脚本、当山彰一演出、畑澤聖悟監修)は午後1時と6時開演。入場料は前売り1500円、当日2千円。高校生以下千円。問い合わせは当山(電話)070(5815)7050かEメールoact@otonadan.com