「私のポジション」 「余白」に想像力解き放つ


社会
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『私のポジション 「沖縄×アメリカ」ルーツを生きる』東江亜季子著 琉球新報社・993円

 人と人の間には独特の距離感のようなもの、いわば流動的な「余白」があると思う。身近な人との距離を限りなく遠く思う時もあれば、極めて親密に感じる時もあるように。私たちはそれぞれの「私のポジション」からしか見ることも語ることもできない。そして、他者との間に漂う「余白」の前に立ちすくむこともあれば、誰かの発した「身勝手」な言葉でそれを埋めてしまうこともある。

 本書は琉球新報の連載企画を書籍化したものであり、第2次世界大戦終結後70年あまりの間に、沖縄に駐留したアメリカ兵や軍属と沖縄の女性の間に生まれた人々の軌跡を鮮やかに描き出す。

 再会した父親と抱き合いながら「あんたは私のこと考えたことあるの?」と問う。「半分アメリカの血だろ」と言われ「この気持ちをどこに持っていけばいい?」と語る。「英語を話せるか」と問われる。明るい髪色へのやゆと「地毛登録」に翻弄(ほんろう)され続け、国体参加後に部活を辞める。

 ページをめくるたびに、沖縄と基地にルーツを持たない「アメリカ・ハーフ」という評者のポジションは激しく揺れ動いた。時折、自分の境遇と重なり合うかのような感覚を覚えながらも、「自分だけ幸せに生きてきたような罪悪感」に涙する人の姿や「基地ハーフとして生まれる子は、ハーフと違う問題も抱えるんだ」といった語りの迫力に、何度も胸が締め付けられた。

 さまざまな呼称で名乗り、名指される人々が生きる日常の風景と「同情ではなく温かい理解」を求める声が交錯する中で、読者は自らのポジションと彼ら・彼女らとの間に漂う「余白」へと想像力が解き放たれていく。

 思わず手に取りたくなる鮮烈なピンクの表紙。より多くの人々に「他者への少しの慎重さや寛容さ、想像力」を持つ必要性を伝えたい、という意志を感じる。「基地は自分のルーツ」と語り「シュンと」なりながらも基地反対を訴える、複雑なポジションを生きる人に、私はいかに向き合えるのか。本書は静かに問い返す。あなたは本書をどう読みますか?(ケイン樹里安 大阪市立大学大学院生、非常勤講師)

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 あがりえ・あきこ 1989年、那覇市生まれ。琉球新報社経営戦略局Rプロジェクトチーム勤務。横浜国立大学を卒業。文化部生活班、NIE推進室などを経て現職。

私のポジション「沖縄×アメリカ」ルーツを生きる
東江亜季子著 琉球新報社編
新書 111頁

¥920(税抜き)