世界初、チョウ急速進化観測 外敵嫌う外見に擬態 琉大研究チーム


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(左から)シロオビアゲハのオス(A)、シロオビアゲハの擬態しないメス(B)、シロオビアゲハの擬態するメス(C)と、毒チョウのベニモンアゲハ(D)。擬態するメス(C)は後翅の白紋が大きくベニモンアゲハ(D)に似ている。いずれも2015~16年に沖縄本島で採集(琉球大学提供)

 毒のある生物に外見を似せることで、天敵の目をごまかして捕食から逃れる「擬態」が進化する過程をリアルタイムで観測した世界初の研究結果が25日、国際学術誌サイエンティフィック・レポートに掲載された。琉球大学農学部の立田晴記教授、辻和希教授らの研究チームによる快挙。有毒な種によりよく似た個体は生き残りやすく、その形質を子孫に伝えて、さらに精巧な擬態者の集団ができていくという自然選択理論の直接的な証拠として注目される。

 研究チームは、台湾以南の熱帯種で以前は生息していなかった毒チョウのベニモンアゲハが琉球諸島に移動・定着した1970年前後から、同じ地域のシロオビアゲハの一部のメスにある後翅の白い斑紋が急激に大型化し、ベニモンアゲハに似てきたことを明らかにした。

 白紋の大型化は、八重山諸島、宮古諸島、沖縄本島の各地で、ベニモンアゲハが定着した後に次々と起きていた。研究者らは「生物は私たちが思う以上に早く臨機応変に変化しているかもしれない」と話す。

 辻教授は「離島はそれぞれ環境が異なる。島ごとに比較することで、さらにいろんなことが分かる」と沖縄で研究することの面白さを語った。