3458票差、〝辺野古外し〟の渡具知氏が当選した理由と課題(名護市長選)


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当選確実の一報がテレビ画面で流れ、画面を見入る渡具知武豊氏(前列中央)と支持者ら=4日午後10時半すぎ、名護市大南の選挙事務所

 沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題が最大の争点となった名護市長選は、移設を推進する政府与党から全面支援を受けた渡具知武豊氏(56)が勝利した。1996年に米軍普天間飛行場の返還合意がされ、辺野古が移設先に浮上して以来、20年以上、移設是非の選択を迫られ苦悩してきた市民は渡具知氏の市政中心の訴えを選んだ。

 辺野古移設阻止を掲げた稲嶺進氏(72)に対して、渡具知氏は辺野古を争点化しない戦術を徹底した。「稲嶺市政2期8年で名護市は取り残された。閉塞(へいそく)感が漂っている」として、市政刷新と経済振興を前面に掲げて戦った。支援する政府、自民党も国政選挙並みの態勢で臨み、菅義偉官房長官や二階俊博幹事長ら幹部を次々と名護入りさせ、企業や団体の組織票を固めた。

 政府は、2017年4月に護岸工事に着手。11月には石材の海上搬送を始め、ことし1月には5本目となる護岸に着手した。名護市長選を見据え、目に見える形で工事を加速させた。市民の中に「反対しても工事は止められない」との諦めムードが漂う中、経済振興を掲げる渡具知氏の訴えが浸透した。

 一方、今選挙にあたり実施した本紙合同世論調査でも66%が辺野古移設に「反対」「どちらかといえば反対」と回答している。辺野古問題が名護市の最大の課題と言える。渡具知氏の勝利には移設反対の声が市民の中に根強くあることも示している。

 渡具知氏は選挙戦では移設の是非を示していない。一方で「国にべったりとはいかない。一定の距離感を置いて基地問題と向き合う」とも話している。移設反対の民意と、支援を受けた政府にどう向き合い、経済振興に取り組むか。手腕が問われる。(佐野真慈)