尾木ママ「無理する教員」と「保護者の甘え」 教員多忙化の背景を指摘


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教員の働き方の見直しを訴える教育評論家の尾木直樹氏=10日、那覇市のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城

 学校教職員の働き方を考えるシンポジウム(沖縄タイムス社主催)が10日、那覇市のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城で行われ、教育評論家で法政大学特任教授の尾木直樹氏が基調講演した。「教員は生徒のためと思ったら、つい無理をする。保護者や社会がそれに甘えてしまう」と話し、教員の働き方の見直しが必要だと訴えた。

高級ブランド制服は「独りよがり」と批判

 尾木氏は冒頭で、東京都の区立小学校がイタリアの高級ブランドの高額制服を採用したことに触れ「保護者や生徒のことが見えておらず、独りよがりだ」と校長の姿勢を批判した。背景には管理職を希望する教職員の不足で質の低下があるとし、教員採用でも一定の倍率に届かなければ「教員の質の担保は保たれない」と断じた。

 現在の教員の労働環境では希望者は減る一方だとも指摘した。半面、これからの人工知能(AI)時代に向けて「最後に生き残る職業は教職だ。次の時代を見つめるビジョンが大事だ」と強調した。

 全国学力調査の順位付けによって各都道府県の競争が激化し、教育現場の疲弊がピークに達していることにも触れ「教員に余裕がなくなり、児童生徒の表情を読み取ることが難しくなっている」と述べた。学力調査で全国トップクラスの福井県で学力の詰め込みに対する見直しの声が上がり、県議会で意見書が採択されたことを紹介し「この意味はすごく大きい」と強調した。

 教員の働き過ぎの背景については「生徒のためならと少しぐらいの無理を我慢する教員」と「それに甘えてしまう保護者や周囲」だと解説し、教育現場だけでなく「国民の意識の見直しも大切だ」と締めくくった。

 引き続き、PTA関係者らを交えたパネルディスカッションが行われた。