沖縄県が安室ちゃんに贈った房指輪、ジーファーって? 沖縄の伝統工芸「金細工」の魅力


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 沖縄県が23日、歌手の安室奈美恵さんに県民栄誉賞を贈った。表彰状とともに記念品として贈られたのは沖縄の工芸品「金細工」による房指輪とジーファー(かんざし)。それぞれどんなもので、どんな歴史があるのだろうか。金細工を復元した職人の記事を紹介します。

金細工職人の又吉健次郎さんの作品。房指輪とジーファー(右下)

 「カン、カカン、カン」。琉球王朝時代から続く金づちの音が10畳余りの工房に響く。那覇市首里石嶺町にある工房「金細工(くがにぜーく)またよし」の7代目・又吉健次郎さん(83)は沖縄で唯一、金細工職人として、ジーファー(かんざし)や房指輪(ふさゆびわ)などを作り続ける。

 りんとしてたたずむ琉球女性の後ろ姿と重なるジーファー。七つの飾りがさらさらと揺れる房指輪。2本のひもの交差をかたどった結び指輪。上品にして艶(あで)やか。金細工の歴史は約500年前にさかのぼる。

 琉球王朝時代、職人たちはさまざまな作品を生み出してきた。だが、沖縄戦などにより道具や作品が失われ、金細工は歴史の表舞台から消えた。金細工を復元したのは、健次郎さんの父で6代目の誠睦さんだ。

父の跡を継ぎ、金細工を作り続ける又吉健次郎さんと弟子歴7年目の宮城奈津子さん=12月29日、那覇市首里石嶺町の「金細工またよし」

 誠睦さんは戦火が激しさを増す中、那覇にも空襲があると予想し幾つかの道具を抱えながら家を出た。当時工房があった那覇市泉崎から泊、泊から首里金城町、そして国頭村奥に命からがら避難し、先祖代々受け継がれてきた道具を守り抜いた。工房に残していた道具も戦後、焼け野原になった工房跡から探し出した。その道具は今、健次郎さんが受け継ぎ、父と同じ金細工を作り続けている。

 父と同じ姿勢、同じリズムで音を刻む。「父は、正しい気持ち、姿勢で打たないと正しい形にはならないと言っていた」。健次郎さんは金細工に独自性はいらないと語る。愚直なまでに追い求めるのは伝統の形だ。独自性を求める弟子を解雇したこともある。

 健次郎さんはかつて、ラジオ局で働いていたが、「時代に残るものを作りたい」との思いから40歳で誠睦さんに弟子入りした。今でも「父の域に達していない」と語り、日々、父が残した道具と向き合って研さんを積む。

 一方、技の継承には課題もある。一つが後継者不足だ。現在、3人の弟子がいるが「多くの人に技術を伝えたい」と願う。伝統美を生み出す沖縄の“技”が受け継がれるか。未来に思いをはせつつ、たたき続ける。黙々と。(吉田健一)
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(2014年1月4日琉球新報掲載)

英文へ→What are fusa rings and jifas that Okinawa bestowed to Amuro-chan?