7年の時を経て岩手から沖縄へ 東日本大震災の被災漁船が漂着 所有者「ばらばらになったと思っていた」


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東日本大震災で被災し、古宇利島沖に漂着した「龍神丸」と今帰仁漁協の関係者=1日午後、今帰仁村の運天漁港

 【今帰仁】2011年の東日本大震災で被災した漁船「龍神丸」=岩手県三陸やまだ漁協所属=が、5月27日、今帰仁村の古宇利島沖に漂着した。所有者の大石秀男さん=同県山田町=は「小さい船だったので津波でばらばらになったと思っていた。見つかって驚いている」と話した。

 名護海上保安署などによると、「龍神丸」は5月27日の午前10時ごろ、古宇利島沖約500メートルの海上で漂流しているのを航行中のフェリーが発見した。船は船首部分を海面に出して、浮いた状態だったという。

 海上保安庁の連絡を受けて、今帰仁漁協の漁船が遭難者などを捜索したが遭難者は見当たらなかった。船にも藻が付着した状態だったことから、漂流した船だと判断し、回収した。

 「龍神丸」は全長約7メートル、総トン数0・8トンの小型漁船。11年3月11日の東日本大震災の津波で、係留していた山田町の大沢漁港から流れ出て、海を漂っていた。船体は右側が損傷しているが、エンジンなども残り、原型をとどめている。

東日本大震災で被災し、古宇利島沖に漂着した「龍神丸」=1日午後、今帰仁村の運天漁港

 大石さんは震災前、「龍神丸」を養殖したカキやホタテの収穫などに使っていた。大石さんは震災で「龍神丸」を含めて2隻の漁船を失った。

 震災当時は消防団にも所属していたため、防災への対応に追われていたという。当時の様子について、大石さんは「船を津波から退避させる余裕がなかった」と振り返る。

 震災後、大石さんは船を新たに購入し、現在もカキなどの養殖を続けている。

 大石さんは、震災から7年2カ月経って船が見つかったことに「7年も壊れずに海を漂っていたことに驚いた。今までよく耐え、立派だったと思った」と話していた。

 現在、「龍神丸」は今帰仁村の運天漁港で保管している。3日に大石さんの息子の龍也さん(37)が来県し、船の状態を確認するという。【琉球新報電子版】