真実の貴さ、後世に 画家・不染鉄氏 亀次郎氏に激励はがき


この記事を書いた人 大森 茂夫
画家の不染鉄氏が瀬長亀次郎氏へ送ったはがき3通を紹介する不屈館の内村千尋館長=3日、那覇市若狭の不屈館

 東京生まれの日本画家・不染鉄(ふせんてつ)氏(1891~1976)が1957年、米統治下の沖縄で那覇市長だった瀬長亀次郎氏に宛てた直筆のはがき3通が那覇市若狭の資料館「不屈館」で展示されている。米軍の圧政と闘う瀬長氏に向けて不染氏は、はがきで「眞実が正義が貴いことを人類に後世に現世に示して下さい」と激励している。

 はがきは、瀬長氏の次女で不屈館館長の内村千尋さん(73)が、自宅にある瀬長氏宛ての手紙やはがきなど約5千通を整理中に見つけた。昨年7月から同館で展示している。

 3通が送られたのは、いずれも不染が奈良県に住んでいたころ。米軍の圧政に対し、民衆の立場に立って抵抗する那覇市長の瀬長氏に米軍が業を煮やし、法律を改正して市長から追放する異常な状況が日本本土でも報じられていた。

 内村さんによると、不染氏と瀬長氏の間で直接の交流は確認できない。新聞報道などで沖縄の状況を知った不染氏が、瀬長氏へはがきを送ったとみられる。

 57年8月6日付のはがきは、市議選で瀬長市長を支持する勢力が勝利したことを受けたものとみられ「祝」と記し「アメ公を追ひはらへ」と記されている。9月14日付のはがきは「新聞を見ました」「日本の最前線に立って闘はれている皆様」などと記した。11月26日付のはがきは「正義のために闘って下さい」「私共で出来る事がありましたら何なりと申しつけて下さい」と支援の思いも寄せた。

 内村さんは「(瀬長氏宛ての)約5千通の中から(差出人の)1人を調べただけでも多くのことが分かった。一つ一つに瀬長市長を励ます気持ちが表れている」と述べ、今も沖縄で続く過重な基地負担も全国や国際世論へ「訴えていく必要がある」と強調した。