朝鮮戦争で機能強化された嘉手納基地 米朝首脳会談を前に地元は


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朝鮮国連軍地位協定を基に飛来するオーストラリア空軍のP8ポセイドン哨戒機 =米軍嘉手納基地

 【嘉手納】初の米朝首脳会談が12日に開かれるのを前に、米軍嘉手納基地では、会談を念頭に置いたとみられるF22ステルス戦闘機が暫定配備されたほか、弾道ミサイル観測能力を持つ米ネブラスカ州オファット空軍基地所属の弾道ミサイル観測機RC135Sコブラボールが長時間飛行するなど緊張が高まっている。北朝鮮の非核化だけではなく、朝鮮戦争の終結についても話し合う可能性がある会談に対し、嘉手納基地を抱える地元からは「平和的に解決してほしい」という声が上がっている。

 嘉手納基地は1944年9月に日本軍によって中飛行場として造られ、沖縄戦の際に上陸した米軍が占領した。終戦後、基地縮小の計画が持ち上がったが、計画は朝鮮戦争の勃発により後退した。

 朝鮮戦争では嘉手納基地からB29などが次々と離陸し、朝鮮半島を爆撃した。開戦から1年間で、嘉手納基地から延べ5807機が出撃し、約5万トンの爆弾を投下したといわれる。

 朝鮮戦争後、米国は基地機能の強化を進めた。極東軍司令部は「これらは全て朝鮮情勢から生じた軍事的必要」と説明した。4千メートル級の滑走路2本が整備され「極東最大の空軍基地」となった。54年に結ばれた朝鮮国連軍地位協定で、米国や英国などの加盟国が使用できるようになった。

 今年4月下旬から約1カ月、協定に基づいてカナダとオーストラリアの空軍の哨戒機が飛来した。

 嘉手納基地周辺住民や関係者は米朝首脳会談の行方を注視している。第三次嘉手納爆音差止訴訟団の池宮城紀夫弁護士は嘉手納支部の定期総会で「平和協定を締結すれば、嘉手納基地はいらなくなる。平和条約を締結し、朝鮮半島に平和をもたらしてほしいという強い思いを沖縄から発する必要がある」と訴えた。

 當山宏嘉手納町長は「朝鮮半島と嘉手納基地は連動している。情勢が厳しくなると運用が激しくなる。緊張緩和をぜひ進めて、平和への努力を進めてほしい」と期待した。