渡具知名護市長、辺野古「容認」徐々に 自公、市議選も「辺野古隠し」へ


この記事を書いた人 Avatar photo 高良 利香
6月議会開会後、記者団のぶら下がりに応じる名護市の渡具知武豊市長。辺野古移設工事については「係争中であり、その行方を注視する」と述べるにとどめた=14日正午ごろ、沖縄県・名護市役所

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設について、名護市の渡具知武豊市長はこれまで「コメントする立場にない」「国と県の行方を注視する」と慎重な姿勢を崩さずにきた。しかし、8月17日以降に土砂埋め立てが実施されることを受け「工事は既に進んでいる」「市の権限で止めることはできない」と発言するなど、辺野古移設工事を容認する考えを徐々に表すようになった。

 辺野古移設工事について、市や市議会レベルでは「止めることはできない」とする構図を打ち出してきていて、工事は「やむを得ない」とする消極的容認の姿勢がうかがえる。

 12日、8月の土砂投入の連絡を受けた渡具知市長は「法令にのっとった工事を市の権限で止めるということにはならない」と述べ、既に護岸工事が進んでいることを強調した。

 渡具知市長はそれまで、辺野古移設に反対する市民の声をくみ取り「国と県の行方を注視する」と、移設の是非を明確にしてこなかった。一方で、2月の市長選では、移設工事を進める政府・自民党が推薦しており「事実上の容認」と言われてきた。渡具知市長は今後、沖縄防衛局が提出する手続きに対応する姿勢を見せる。

 渡具知市長に追随し、9月の市議選では市長を支える自公市議らも辺野古移設を争点から外す方向で動き始めた。公明党県本幹部は「辺野古移設は自治体レベルで解決できる話ではない。争点にはならない」と強調し、市長選同様に市民の暮らしを優先にした公約を掲げる算段だ。自民党関係者も「辺野古移設は争点にならないことは市長選で実証済みだ」として、市長の発言は「織り込み済みだ」とする。

 新基地建設を進める政府に協力姿勢を示すことで得られた再編交付金。同交付金を組み込んだ補正予算案を渡具知市長は6月議会に提出した。市長は「自治体の長は法に従わざるを得ない」との姿勢で、6月議会を切り抜ける構えだが、野党は再編交付金を否決する考えだ。その場合、市長をはじめとする与党は「公約が否決された」として、9月の市議選での野党の切り崩しを狙っている。 (阪口彩子)