辺野古新基地是非、答弁避ける 「容認」、知事選後まで禁句


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名護市議会6月議会定例会一般質問で答弁調整する渡具知武豊市長(右端)と市幹部ら=20日、名護市議会議場

 沖縄県の名護市議会6月定例会では、再編交付金に質問が集中している。渡具知武豊市長は辺野古新基地建設に協力姿勢を示したことで得られる再編交付金を盛り込んだ補正予算案を提出。その上で移設工事に対して「容認ではない」との見解を示した。一方、野党からは、「容認」の言葉を使わないだけで、工事に反対しない姿勢は移設工事を認めていることと同じだとして「矛盾している」との指摘が相次ぐ。

 「質問と答弁がかみあっていない」。20日の一般質問冒頭、野党の比嘉祐一氏が指摘した。議会後、反対とも容認とも言わない市長の姿勢を批判し「再編交付金を受け取った以上、移設工事を認めていることは、はっきりしている。何十億という金をもらってどうする。長い目で名護の財政を見ているのか」と続けた。

 6月定例会は、渡具知市長の答弁に注目が集まっていた。再編交付金について初めて公の場で説明する機会だったからだ。だが渡具知市長は従来の答弁を繰り返している。比嘉勝彦氏から「米軍再編に向けて協力姿勢を示したということでいいか」と問われても「法令に従い適切な判断をしていくと申し上げている。辺野古移設は容認ではない」と述べるにとどめた。

 渡具知市長が「容認」との言葉を使わない理由は、9月に控える市議選にある。現在、少数与党で議会運営に苦慮しており、市議選で市長を支える保守系の過半数の議席獲得が必須だからだ。自民党県連関係者は「名護市議選は党本部も官邸も注目している」と指摘。辺野古移設の「容認」姿勢を示すことで渡具知市長の推す候補者が選挙で不利になるのを避けたい思惑がある。

 政府は市長が「容認」の単語を使わずとも存在自体を「容認」と捉えて工事を進め、秋の市議選と知事選を乗り切る算段だ。別の自民党関係者は「名護市長が『容認』と言うのは知事選で自民党が勝ち、知事と宜野湾市長と一緒に3人を並ばせた時だ」と述べ、知事選が終わるまで「容認」は「禁句」だと説明する。だが再編交付金を受け取ったまま、基地建設への是非を明確にしない渡具知市長の姿勢に、野党は「説明責任を果たしていない」と批判を強めている。
 (阪口彩子)