「『愛国心』が戦争生む」 97歳・安里さん 教育の現状、不安視


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「戦争は二度とあってはならない」との思いで毎年慰霊祭に参列しているという安里ハルさん(右)

 【八重瀬】沖縄県八重瀬町が20日に開催した具志頭城址公園内の「魄粋(はくすい)之塔」での戦没者慰霊祭には、戦争体験者の姿もあった。日本軍に徴兵された夫・亨さんを中国戦線で亡くした安里ハルさん(97)は毎年慰霊祭に参加している。安里さんは「『愛国心』や『大和撫子(やまとなでしこ)』という言葉から戦が始まった」と振り返った。その上で、愛国心教育を重視する現政権の方針に「当時は『愛国心』が戦争につながったので不安を感じる。戦争は何があっても駄目だ」と強調した。

 安里さんは1944年10月の10・10空襲の後、夫の母親のンタさんと、当時5歳だった長男と共に与座の墓や壕に身を隠すなどしていたが、6月23日に糸満市摩文仁と八重瀬町具志頭の境目にある壕で米兵に保護された。

 安里さんは「道端に倒れて『水がほしい』とうめいている人たちもいたが、何もできなかった。自分と家族のことで精いっぱいで、たくさんの死体の上を歩いて逃げた」と話す。砲弾で母親を失った子どもたちの姿も脳裏に焼き付いているという。

 安里さんは「苦しんで亡くなった人たちのことも思い出す。どんなことがあっても戦争はしてはならない」と言葉に力を込めた。