沖縄県名護市辺野古の新基地建設で、県は辺野古海域に土砂が投入される前に埋め立て承認を撤回する方針だ。土砂投入の開始予定1カ月前、17日に沖縄防衛局に送った行政指導文書を撤回までの“最後通告”と位置付ける。軟弱地盤の存在を念頭に、護岸全体の実施設計を一括で提出して県と協議するよう要求した。11月の知事選まで知事権限の行使を避けて円滑に工事を進めたい政府の“急所”を突く狙いがある。
軟弱地盤は、沖縄平和市民連絡会の北上田毅氏らが情報開示請求で沖縄防衛局の地質調査報告書を入手し、明らかになった。大浦湾側で地盤の強さを表すN値でゼロが多い地点がある。深さ40メートルにわたって非常に緩い砂地や軟らかい粘土があり、液状化や沈下の恐れがある。大規模な構造物を建設する場合、N値が50程度必要とされ、不足している場合は地盤改良が必要となる。しかし、防衛省はN値のみで地盤強度は判断できないとの立場だ。
埋め立て承認の際に県が承認の条件として付した「留意事項」は、工事の実施設計と環境保全対策についての事前協議を定める。県は、協議の前提として護岸全体の実施設計の一括提出を求めている。一方、沖縄防衛局は一部護岸の実施設計を提出せずに協議は調ったとして工事を続けている。
実施設計が未提出なのは護岸C1~3、係船機能付き護岸などだ。地盤の弱さが特に深刻なボーリング調査地点「B26」と「B28」と重なる。軟弱地盤の存在を認めれば、埋め立て申請書の設計も変更しなければならず、改めて知事の承認が必要となる。知事は権限を行使できることになり、政府としては避けたいところだ。
県は17日の行政指導文書で、工事を即時停止した上で全体の実施設計と環境保全対策を提出するよう求めた。現状のまま工事を続ければ、留意事項の不履行に加え、災害防止と環境保全に十分配慮するという公有水面埋立法の要件にも抵触する可能性を指摘。県はこの指導に応じなかったと判断すれば、埋め立て承認を撤回する手続きに入る。沖縄防衛局が全体の実施設計を提出しても、工事を続ける限り、県の指導に応じたことにならない。工事の即時停止が前提だからだ。
県が「撤回」に踏み切れば、再び国と県の攻防は法廷に持ち込まれる。県が軟弱地盤の存在を証明できるか、国がどう抗弁するかが焦点となる。
(明真南斗)