辺野古撤回、土砂投入後の可能性 防衛局、沖縄県に聴聞の延期要求


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、翁長雄志沖縄県知事が公有水面埋め立て承認撤回を表明し、沖縄防衛局に9日開催を通知していた聴聞の期日について同防衛局は3日、9月3日以降に変更するよう県に申し出た。変更の理由について「反論のための調査や書面の作成にも相当の日数を要する」と説明し、1カ月程度の準備期間を求めた。防衛局の求める期日は、辺野古沿岸に土砂投入が可能となる8月17日を大きく超えており、県の撤回手続きに先行して国が本格的な埋め立て工事に着手する可能性が大きい。県は週明けに防衛局の申し出を認めるかどうか、対応を協議する。

 翁長知事は7月27日に記者会見を開き、埋め立て承認の撤回に向けた聴聞手続きに入ることを表明した。行政手続法では免許や許可の取り消しに先立ち事業者から言い分を聞く場を設けるよう定めており、聴聞は撤回手続きの初段階に当たる。31日に県職員が防衛局を訪れ、8月9日午後2時から県庁で聴聞を開催すると通知していた。

 これに対し防衛局は3日夕に県土木建築部を訪れ、「聴聞等変更申出書」を提出した。申出書では聴聞を9月3日以降とする理由について、行政手続法は事業者側に聴聞を通知してから実施するまで「相当な期間」を置くことを定めており、「相当な期間」は聴聞を受ける防衛局が必要とする期間から判断するべきだと訴えた。県は期間を1~2週間と想定していた。

 その上で防衛局は、埋め立て承認が撤回された場合には、工事契約で支払い済みの約928億円が無駄になる経済的損失や日米間の信頼関係を損なうなどの影響が大きいことから、「沖縄防衛局にも十分防御権を行使させた上で、慎重にも慎重を期して行われるべきは当然」と、十分な準備期間の必要性を主張した。

 さらに、県から示された撤回の原因となる事実の内容が具体性や明確性に欠けると指摘し、精査する必要がある資料も約1300ページと膨大なことから、「通常、2カ月は準備期間を与えられるべきだ。控えめに見ても1カ月程度は要する」と9月3日以降への変更を求めている。