沖縄県知事選 出遅れ危機感「結束優先」 玉城氏、出馬要請受諾


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出馬要請後、記者団の質問に答える調整会議の照屋大河議長(中央)=23日、沖縄市

 沖縄県議会与党会派や辺野古新基地建設に反対する政党や労組、企業でつくる「調整会議」(議長・照屋大河県議)は衆院議員の玉城デニー氏の知事選擁立を正式に決定し、玉城氏に出馬を要請した。翁長雄志知事の生前の音声の存在や中身を巡り、与党内に不協和音も生じたが、調整会議として後継候補の出馬要請にこぎ着けた。玉城氏は26日に出馬を受諾するとみられる。9月13日の告示まで3週間に迫る中、「ようやくスタートライン」(玉城氏)に立つ候補者の支援態勢を今後、どれだけ確立できるかが課題となっている。

 これまで翁長知事の再選を前提に進められていた与党調整会議。翁長氏の急逝により、早急な候補者の選考が迫られることになった。事態が急転したのは18日、翁長氏が生前に残した後継に関する音声記録の存在だった。

 遺族関係者から音声を聞いた新里米吉議長が19日の調整会議で経緯を説明し、翁長知事が名前を挙げた玉城氏と金秀グループ会長の呉屋守将氏のうちから、選考を進めることを全会一致で決定した。同日夜には調整会議の照屋議長らが玉城氏と面談し、出馬を検討する意向を確認した。

 当初は選考対象に上がっていなかった玉城氏の擁立へと一気に傾いた流れに、玉城氏に最も近い会派おきなわが疑義を唱えた。新里議長に対し、擁立の根拠となる音声記録を調整会議の中で開示する必要があると要求した。開示されない限り、候補者選考作業を進める「調整会議」への参加を見送る方針を示したが、新里議長は開示を拒否。与党内の不協和音は高まるようにみえた。

 だが、支持者らから強い批判を受けた会派おきなわは「知事選でまとまることが最優先」と23日、記者会見を開き、知事選候補として玉城氏の推薦を発表した。会見では「デニーさんに対しても反対しているような印象を受けたようなニュアンスがあったので、払(ふっ)拭(しょく)しないといけない」「玉城氏の決意が固いなら、いの一番に推薦を上げていくのが我々の立場。オール沖縄会議からの離脱は一度も話はしていない」と打ち消した。

 会派おきなわの推薦発表を受け、那覇市の自治労県本部に調整会議が緊急招集された。会議では直ちに玉城氏に出馬要請を行うことを確認し、2時間後には沖縄市の玉城氏の事務所に出向いた。照屋議長は「調整会議の選考基準に照らして玉城氏が最適任者だということだ。(音声の開示は)私たちの権限ではないし、それを求める意見もなかった」と集まった記者団に説明し、音声問題の“決着”を図った。

 騒動は収拾したが、この間、県政奪還を目指す自民と公明は前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)の選挙支援を確認した。強固な協力関係を築き、着々と準備を進めるのに対し、与党の出遅れ感は否めない。4年前、翁長知事の当選を支えたかりゆしグループは県民投票をきっかけに「オール沖縄会議」から脱会し、知事選では自主投票を決めている。

 「オール沖縄」態勢にほころびが生じる中、中道保守の支持をいかに取り込むかが今後の大きな課題だ。玉城氏は22日、金秀グループの呉屋会長と面談し、選挙支援を要請し、呉屋氏は玉城氏の出馬を支持することを表明した。会派おきなわは「沖縄政治経済懇話会」を招集し、企業に玉城氏の支援を呼び掛ける。

 4年前の知事選挙では、保守系の「ひやみかちの会」と、革新系の「うまんちゅの会」がそれぞれ発足し、新里県議が議長を務める調整会議が橋渡し役となり、保革が協力し、知事選を勝利に導いた。この態勢にいかに近づけることができるのかが、正念場となっている。
 (与那嶺松一郎、島袋良太、中村万里子)