統一地方選2018候補者アンケート 活性化、子育て力点


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 琉球新報は、統一地方選の29市町村議選の候補者(立候補予定者含む)に対し、最優先の政策などについてアンケートを実施し、8月30日までに477人から回答を得た。「最も取り組みたい分野」では、約半数が「地域経済の活性化やまちづくり」を挙げた。「医療・保健・福祉」の分野では「保育所や児童館整備など子育て支援」が23・3%(111人)、「教育・文化・スポーツの分野」では「奨学金など人材育成支援」が33・1%(158人)と最も多く、子育てや教育を重視した豊かなまちづくりへの取り組みを重視する傾向が強い。

▼優先課題…地域経済が最多 医療、教育も高く
 

 議会活動で「どの分野に最も取り組みたいか」について、候補者が九つの選択肢の中から最も多く選んだのは「地域経済の活性化やまちづくり」47・2%(225人)で約半数を占めた。「保健・医療・福祉」が13・4%(64人)、「教育・文化・スポーツ」の11・3%(54人)と続いた。
 北部、中部、南部、八重山の4地域別でも「地域経済の活性化やまちづくり」が最多だった。伊是名村や伊江村、座間味村、渡嘉敷村など離島でも最も多く、地元の活性化への関心が高い。
 北部では、地域活性化の次に「保健・医療・福祉」の10・8%(15人)、「教育・文化・スポーツ」が7・9%(11人)で、「平和・米軍基地問題」は7・2%(10人)と僅差だった。
 中部で2番目に多かったのが「保健・医療・福祉」の17・3%(32人)で、続いて「子どもの貧困」が12・4%(23人)で重要課題に挙がった。
 南部は「教育・文化・スポーツ」の16・5%(16人)、「保健・医療・福祉」が13・4%(13人)と、順位は異なるものの、総合と同じ項目が上位を占めた。
 八重山は、「教育・文化・スポーツ」と「平和・米軍基地問題」がそれぞれ8・9%(5人)で同数、「保健・医療・福祉」が7・1%(4人)と続いた。


 

▼平和・基地問題…地位協定改定多く

 

 「平和・基地問題、防衛」の分野で優先して取り組みたい課題の1位に選ばれた事項のうち、最も多かったのは「日米地位協定の改定」で44%(210人)だった。次いで「米軍普天間飛行場移設問題の決着」の16・6%(79人)、「平和教育の充実」の9・6%(46人)だった。
 「日米地位協定の改定」は、北部・中部・南部・八重山の各地域で最も多く、北部地域では50・4%と過半数となった。県内全域で最優先課題として認識されていることがうかがえる。
 南部では「平和教育の充実」が18・6%(18人)で2番目に多かった。
 八重山では「自衛隊誘致などの防衛強化」が8・9%(5人)と上位に入った。
 無回答は10・3%(49人)と、選択式の問題では最も無回答が多かった。


 

▼活性化策…農業や観光 柱に
 

 

 「地域経済の活性化・まちづくりで優先して取り組みたい事項」を全地域で見ると、11項目のうち「農業の振興」が30・8%(147人)で最多だった。「観光の振興」17・2%(82人)、「地元企業の支援」が11・7%(56人)と続いた。
 北部、南部、八重山では、全地域と同様に「農業の振興」「観光の振興」「地元企業の支援」が上位を占めた。
 伊江村では、候補者10人のうち9人が「農業の振興」を1位に挙げた。「水産業の振興」は、伊平屋村で候補者10人中3人、渡名喜村は7人中5人が1位に挙げるなど、離島では農業・水産業の振興が重要課題に挙がった。
 中部では1位が「観光の振興」の21・6%(40人)で、2位は「地元企業の支援」の15・7%(29人)、「企業誘致・雇用創出」の13・5%(25人)だった。


 

▼教育・文化・スポーツ…人材育成を重視

 

 教育・文化・スポーツの分野で優先して取り組みたい事項では、「奨学金など人材育成支援」を1位に挙げた候補者が33・1%(158人)で最多だった。全地域で上位となり、北部で46・8%(65人)、中部では33・5%(62人)で、どちらも1位だった。南部と八重山でも2位だった。
 「学習支援員の配置など学力向上対策」を重視する声も多く、南部では33・0%(32人)で1位。他地域でも2番目に多く、教育を重視する傾向が見られた。
 北部と中部では「スポーツ施設の充実・スポーツの振興」が3位だった。北部で9・4%(13人)、中部で12・4%(23人)。その一方で、離島を含む南部と八重山では「学校施設の充実」を優先事項に選んだ立候補予定者が多かった。八重山では32・1%(18人)で1位。南部でも3位で、離島圏では特に学習環境の整備が課題となっているようだ。


 

▼医療・福祉・保健…健康施策や病院も

 

 医療・福祉・保健の分野で優先して取り組みたい事項では、「保育所や児童館整備など子育て支援」を選んだ候補者が最も多く、23・3%(111人)だった。中部、南部、八重山では1位、北部でも3位だった。県内の待機児童数は18年4月1日時点の速報値で1884人。昨年同時期と比べると減少しているが、依然として大きな課題であり、県内全域で重要課題と捉えられている。
 2番目に多かったのは「健康診断や健康づくりなど予防政策の充実」で20・1%(96人)だった。
 子育て支援や健康増進の取り組みが上位に上がる一方で、八重山では「医師や看護師の不足問題」を最重要課題の一つとした候補者が19・6%(11人)だった。離島5村を含む南部でも3位に上り、離島医療の深刻な問題が浮き彫りとなった。


 

▼投票呼び掛け…ネット活用し発信

 

 近年、選挙のたびに課題となっているのが投票率の低下だ。投票率を上げるために取り組みたいことを尋ねる項目(自由記述)では「会員制交流サイト(SNS)で情報発信」など、インターネットの活用を挙げた候補者が45人と最も多かった。
 次いで「学校教育を通して投票権がいかに大切な権利であるか学習する機会を増やしたい」(60代新人)や「校内でも積極的に社会勉強をできる環境をつくってほしい」(50代現職)など、学校での主権者教育の強化を挙げた人が34人だった。
 「期日前投票所を多くする」(60代現職)や「商業施設内における投票(を増やす)」(40代現職)など、投票所の工夫や増加を挙げた人も12人いた。「(投票所の)バリアフリー化を進める」(40代現職)やインターネット投票の整備の必要性を訴える意見もあった。
 離島の候補者は「(学生が)投票のために出身地に戻ることが難しい」とした上で「学校や大学を不在者投票施設に指定すべき」(60代新人)と訴えた。「高校大学がなく、(故郷に)選挙権がない人が多いので、故郷に選挙権を認めてほしい」(50代現職)との声もあった。


 

▼違法掲示物…「改善すべきだ」6割

 

 選挙が近づくたびに各地で違法なポスターやのぼりが散見される現状について、候補者の65.4%(312人)が「改善すべき」との考えを示した。理由では、「観光立県として恥ずかしい」(50代現職)など景観の観点から改善を求める声や、「議員は法を守る立場」(60代現職)など議員のモラルを問う意見が多かった。一方で「(町村議選では)5日間しかない告示期間の掲示板では有権者に浸透しないため、指定掲示板を増やすなど改善が必要」(50代現職)などの声もあった。
 「現状はやむを得ない」と答えたのは9.0%(43人)。理由として「有権者に政策を伝え、投票率を上げるのに必要」(50代現職)、「投票率をアップするためにも立候補者の名前、顔を知らせるべき」(60代現職)など投票率向上の一環としてとらえている候補者もいた。
 「その他」の7.3%(35人)では、「新人の立場であれば名前を知らせるために必要ではないか」(50代新人)など知名度の低い新人と現職の不公平さを訴える声や、「時代にあった公職選挙法をつくる必要がある」(30代新人)などもあった。


 

▼議員報酬…町村の47%「足りない」

 

 議員報酬が十分かどうかを尋ねる問いで、「足りない」と答えたのは市部で23.5%(42人)だったのに対し、町村では半数近い46.8%(137人)に上った。「十分だ」と回答したのは市部で36.9%(66人)、町村で24.6%(72人)。町村では、議員報酬を不十分と感じている候補者が市部と比較して約2倍となっており、大きな差が見られた。
 「足りない」と答えた候補者の理由(複数回答可)では、市部では「議員活動にお金がかかる」が52%で最も多かった。次いで「市町村職員や民間企業より給与水準が低い」が18%、「扶養家族が複数いて、生活できるほどの報酬ではない」が8%だった。「その他」は22%だった。
 町村では「扶養家族が複数いて、生活できるほどの報酬ではない」が33.6%で最も多かった。「議員活動にお金がかかる」が31.3%、「市町村職員や民間企業より給与水準が低い」が22.1%だった。「その他」は12.8%だった。
 「その他」を選んだ候補者の中にも「若者が立候補できる報酬ではない」(50代現職)、「定年を過ぎた者はこの報酬でも良いが、子育て世代では足りないと思う」(60代現職)など子育て世代の生活には不十分との回答が複数あった。
 自由記述では、離島からは「議員報酬だけでは子どもを大学に行かせられない」(60代現職)、「冠婚葬祭費が多く、区長よりも給与が少ない」(60代現職)など厳しい現状を訴える声もあった。市部でも「主権者の意思を代表する議員の正当な活動を保障する額は必要」(60代現職)との回答があった。