沖縄県知事選、ツイッター分析 ネット選挙、目的逸脱も


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 琉球新報社が沖縄県知事選に関するツイッター(短文投稿サイト)でのつぶやきを調べたところ、一般人の投稿は候補者を批判・攻撃する内容が多かった。主要候補はいずれも情報拡散力の強い人が、候補者の投稿を積極的に広めていた。識者はSNS(会員制交流サイト)が有権者の政治参加を促し、選挙を良い方向に変える可能性を示しながらも「現状はそうなっていない」と分析した。

<本人投稿>佐喜真氏「離職率など課題指摘」/玉城氏「翁長氏への思い言及」

 9日から5日間の候補者本人の投稿は佐喜真氏が36件、玉城氏が40件だった。投稿の広がりを見るリツイート(引用投稿)やリプライ(返信)は佐喜真氏が6746件、玉城氏は8968件だった。各種メディアが報じた告示日は、候補者投稿のリツイートも飛躍的に増えた。

 佐喜真氏は告示日の投稿が最も多く、10件。ライン@への登録や、自民党幹部の小泉進次郎氏が参加する応援演説へのお知らせなどを投稿した。沖縄の交通渋滞や若者の離職率の高さなどの課題、6日の北海道地震に関し、沖縄の災害対策についても投稿した。米軍普天間基地についての言及はなかった。

 玉城氏は政策を発表した10日の投稿が最も多く、政策などについて12件投稿した。討論会があった11日は故翁長雄志知事について言及した。告示日は開設した公式サイト、県知事選に懸ける思いをまとめたメッセージ動画へのリンクを投稿した。「普天間」「辺野古」については11日に1件投稿した。

 リツイートは佐喜真氏投稿を同じ人が複数回リツイートしているのに対し、玉城氏はさまざまな人がリツイートしている。

 佐喜真氏の投稿のリツイートは告示日のほか、玉城氏が「ネットデマ」を名誉毀損で刑事告訴するとの報道があった11日に増えた。一方、玉城氏の投稿は討論会について11日に多くリツイートされた。

<一般投稿>佐喜真氏へ賛否少なく/玉城氏へ攻撃意見多く

 県知事選に関するツイッター分析によると、9月9日から13日(告示日)に一般の人々が投稿したツイートの大半が、玉城デニー氏への攻撃や批判的な意見だった。ツイッターが「落選運動」のツールとして利用され、特に玉城氏のネガティブキャンペーンが目立っていることが浮き彫りになった。本紙が両候補に対するツイートやリツイートの一部(約20万件)を確認した。

 9日から告示日前日の12日までに玉城氏に対するとみられる攻撃・批判的なツイートは本紙の調べでは約9割に上った。佐喜真氏に対しては、肯定的な内容も否定的な内容も少なかった。肯定的な内容だけを見ると、玉城氏の方が佐喜真氏よりも多かった。告示日の13日は、両候補の動向や肯定的なツイートも多くなった。本格的な選挙戦が始まるとともにツイートやリツイートの数が飛躍的に増えた。

 玉城氏の過去の政治活動を批判するなどした上で、「不祥事のデパートだ」「こういう人を知事にしてはいけない」などと真偽が明確でない情報を基に中傷する内容も多かった。

 9月10、11日には「基地を造って平和になることは絶対にない」と述べた玉城氏の発言に、タレントのケント・ギルバート氏がネットの番組で「変な薬飲んでない?」と揶揄(やゆ)した内容が多くリツイートされた。その内容に併せて「現実を認識していない」「妄想発言だ」などと中傷するツイートが数多く添えられた。

 11日は玉城氏がネットを中心にデマが広がっているとして、名誉毀損(きそん)の疑いで那覇署に告訴したことが大量につぶやかれた。佐喜真、玉城両氏の支持者からとみられる。

 佐喜真氏に対しては、5日に行われた日本青年会議所沖縄ブロック協議会主催の公開討論会で女性政策について「女性の質の向上」と述べたことに対し、批判が集中した。「どうしたら女性の質を上げられるのか」などのツイートがあった。

 さらに佐喜真氏が普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設の是非について発言を避けていることに対して「この段階でも言わないのは県知事候補としてどうか」など批判的なツイートもあった。

<多く使われた言葉>「辺野古」「基地」多く/「公明」「オール沖縄」も

 ツイッター(つぶやき)の傾向を分析するために、琉球新報で選んだキーワード約100語がどれだけ文(ツイート)の中に盛り込まれたかも調べた。両候補とも「沖縄県知事選」や相手候補の名前が最も多かった。

 佐喜真淳氏については多く使われたのは「辺野古」「基地」「普天間」「公明」「対立」「遺志」「未来」「経済」「オール沖縄」などだった。

 玉城デニー氏については「公明」「ネット」「辺野古」「基地」「新時代沖縄」「遺志」「中国」「翁長知事」「オール沖縄」などが多かった。

 一般の人々のツイッターの投稿数は肯定的、否定的な内容を含め、玉城氏に対するツイートが佐喜真氏を大きく上回った。両候補とも告示日の13日につぶやかれた数が最も多く、この日の玉城氏への投稿は佐喜真氏の投稿の5倍以上に上った。

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<調査方法>
 県知事選の主要候補者による短文投稿サイト・ツイッターのアカウントの動向を9日の統一地方選投開票日から追跡した。インターネット上で書き込まれた事件や災害などの情報を報道機関にリアルタイムで発信するスペクティに委託し、本人アカウントのつぶやき(ツイート)の件数や、それを他の人が拡散(リツイート)した状況などを追った。
 好意的な拡散か否定的な拡散かも分析した。事前に用意した知事選に関連する、各候補者の政策から選んだキーワードや政党名、話題になっている単語などを登録し、その言葉に関連したツイートの出現頻度も調べた。