沖縄県知事選 公約「携帯料金を削減」 → 知事や国に権限なし


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 県知事選を巡り、候補者の一人が掲げる公約「携帯電話料金の4割削減」について、有識者やジャーナリストから「知事にその権限はない」などとするSNSの書き込みが拡散している。携帯電話会社など通信事業者を所管する総務省によると、携帯電話料金を引き下げる法律や国の権限はなく、地方自治体の長である知事にも権限はない。書き込みは適正な内容だった。

 この候補者は公約となる政策集で「携帯電話利用料の4割減を求める」と記載している。ただ本人のユーチューブやツイッターでは「携帯料金の4割削減を進め家計を助けます」「携帯代4割削減」と記載しており、不特定多数が目にするインターネットでは「求める」という表現は省かれ、知事の権限で実現できるかのように書かれている。16日に那覇市内で街頭演説した菅義偉官房長官も、この候補者が公約に掲げていることを歓迎し「4割程度引き下げる。そうした方向に向かって実現したい」と主張していた。

 候補者が掲げる「携帯電話料金4割削減」について総務省に確認すると「国の法で料金をこれにしようと言える権力はどこにもない」と説明する。携帯電話会社に関する電気通信事業法には、料金を引き下げたり、引き上げたりする規定はなく、どこにもその権限はないとした。法改正で規定することもできるが、その動きはない。

 ただ、引き下げを「求める」ことはできるという。それでも「何の根拠もなくお願いしますということはできると思うが、事業者側がそれに従う法律などはない」(政府関係者)というのが実情だ。

 一方、総務省は6月に携帯電話大手3社に対し、スマートフォン販売時に2年契約を前提として基本料金を割引する料金プラン「2年縛り」を見直すよう求めた。10月からは「モバイル市場の競争環境に関する研究会」を開始し競争促進策を検討する。その狙いも価格競争が起きて料金が低下することに「期待」するにとどまっている。

 携帯電話料金については格安スマホ会社が増加する中、携帯電話料金やサービスは市場原理で変動している。一候補者の公約とは別に、国による働き掛けは進められている。

 しかし、携帯電話大手の関係者からは「基地局の維持や先端技術の開発に多額の費用がかかるのも事実だ」と反発する声もあり、国であっても料金値下げは容易ではないのが現状だ。

 (’18知事選取材班)